「不美人、不美人」「将来は整形手術を受けさせる」

幼少の頃から母親は、ことあるごとに澤田さんのことを、「不美人、不美人」とさげすんだ。特に親戚の前では、「将来は整形手術を受けさせる」とことあるごとに言いふらすため、澤田さんは屈辱を感じていた。

「私を不美人と言うのは両親だけでした。その一方で両親はそろって私の電話や年賀状にまで神経を尖らせました。『恋愛は時に破滅に向かう』と、自分たちの経験から嫌というほど思い知らされていたので、娘が危険な轍を踏まないようにと考えてのことかもしれません」

また、澤田さんが高校生の時は、母親は突然自筆のメモ書きを見せて、澤田さんに訊ねた。

「これはあなたが誰かと連絡を取り合うために伝言板に書いたの?」。

そのメモにあったのは、「〇〇で何時」という文言。母親は、澤田さんが通学で利用していた駅の伝言板から見つけてきたのだ。それをチェックに行かせたのは父親だという事実を知った時、澤田さんは愕然とした。

「もしかしたら両親は駆け落ちする前、伝言板で連絡を取り合っていたのかもしれません。だから私の通学で利用している駅の伝言板が気になったのだと思いました」

怒ってしかりつける大きな母親の影と床に座り込んで泣く少女
写真=iStock.com/evgenyatamanenko
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不思議な縁

澤田さんは、大学進学と同時に一人暮らしを始め、卒業後は金融系の企業で営業として働き始めた。

卒業間際に専門商社に勤める男性と知り合い、初対面で澤田さんは一目惚れ。少し話すと、音楽や映画の趣味が合ったため、猛アタックするも、「8歳も年下だと恋愛対象として見られない」と相手にされなかった。

ところが、それから5年後のある日、澤田さんに見知らぬ番号から電話がかかってきた。出てみると、5年前に一目惚れした男性だとすぐに分かった。びっくりした澤田さんだったが、自分でかけたはずの男性も驚いている様子。聞けば、「家の留守番電話に男性の声で、『折り返し電話してください』というメッセージが入っていたのでかけてみたところ、澤田さんが出た」という。お互い、5年前から転居し、電話番号は変わっていた。澤田さんも男性も、留守電の声の主に思い当たらなかった。

奇妙な再会だったが、それを機に2人は関係を深めることになる。そして7年後、男性42歳、澤田さん34歳の時に入籍。両親は、お互いの実家が近いことや、相手の男性の温厚そうな雰囲気、仕事で転勤がないことを喜んでくれた。

澤田さんたちは結婚式を挙げず、新居は通勤しやすいところを選択。結婚後は、連休の度に夫婦で実家に顔を出した。澤田さんの父親は夫と連れ立って、散歩や釣りに出かけるのを楽しみにするようになった。