6年後に達成したノーヒットノーラン

山井大介は2007年の日本シリーズ第5戦、8回終了時点でパーフェクトのまま降板したが、13年に6年越し雪辱のノーヒットノーランを達成した。

2008年と09年は未勝利に終わった山井は、10年には7勝を挙げたが、12年は「なんでも屋」として先発・中継ぎ・ロングリリーフ・抑えに奮闘。自己最多の56試合に登板し、4勝13ホールド15セーブを挙げた。

この2013年はなかなか調子が上がらず、4月にはブランコ(DeNA)にサヨナラ3ランを浴びるなど、シーズン5勝に終わった。

それだけに、このノーヒットノーランが翌2014年の最多勝・最優秀勝率のタイトル獲得につながるきっかけになってよかった。

規定投球回クリア自体が初めてで、36歳にして初の2ケタ勝利マークは史上最年長記録となった。

この試合、1回表に7点の援護を受けたが、山井の調子は決していいとはいえず、結果的に全115球中49球、43%がボール球だった。

「狙ったところに投げられたのは何球もないくらい」

試合後にそう本人が語ったように、4四球を出している。これは川上憲伸のときのような、ノーヒットノーランを狙うための意図的な四球ではなく、攻めていってもストライクが入らなかったのだ。

決め球のスライダーとフォークボールを中心にリードしたが、DeNA打線がけっこう甘いところを打ち損じて、ファウルや凡打になった。

僕は「そのうち打たれるだろう」という意識だったが、9回になって「いまノーヒットノーランか。じゃあ最後まで狙っていかなきゃな」という感じだった。

どちらかというと、少し逃げの配球だった。とにかくバットを強く振らせないようにしたかった。

相手打者も追い詰められて、なかなかまともにスイングできない手打ちの状態になっていた。少しタイミングを外せば凡打にできる。だから、9回はスライダーとフォークを連投させた記憶がある。

キャッチャー
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元同僚の選手を抑えるのは楽じゃない

この試合、元中日のブランコとノリ(中村紀洋)が相手DeNA打線に名を連ねていた。

「一緒のチームでやっていたから、強いところ・弱いところをわかり切っている」

そう思う読者も多いだろうが、それは抜きにして純粋に対ブランコ、対ノリということでリードしていた。スコアラーからの情報を入れながら、あとは自分がブランコとノリをどういうふうに抑えていくかをすり合わせた。

「捕手として投球を受けていたから、球筋がわかって打てるだろう」

そんなこともよく言われるが、僕は基本的に別物だと思っている。