仲介業者には、大手と、駅前の小規模な不動産屋の2種類があります。なんのルートもない人が中古住宅を探すのであれば、私は大手のほうをお勧めします。コンプライアンスがしっかりしているので、安心度が高いからです。
そうはいっても、駅前の不動産屋さんは地元に密着していますから、割安な物件や掘り出しものの情報を持っている可能性はあります。ところがそういうところは、飛び込みで行ってもなかなか相手にしてもらえません。もちろん追い返されはしませんが、いい物件を紹介してもらえるとは期待できないでしょう。
街の不動産屋では、まず売れ残っている物件を3つぐらい見せられます。最初にひどい物件を見せて、「なんだ、相場はこんなものなのか」とがっかりさせます。その次に、もう少しいいところを見せて、どれくらいまでなら出せるのかこちらの予算を探る。本命を見せるのはそのあとです。さんざんボロい物件を見たあとでは、たいしたことのない物件もなんだかよく見えてしまう。このテクニックを俗に、「脅し・試し・落とし」というと聞きます。
地場の不動産屋さんを利用するのなら、「親戚がやっている」「知人の紹介がある」など何らかの繋がりがあるところにすべきです。そうすれば身内扱いしてくれ、はじめからいい物件を出してくれます。その代わり、そこが勧める物件は断りづらくなってしまう可能性はあります。
「大手も中小も関係ない、営業マンの人柄が大事だ」と思う方もいるかもしれません。それも一理ありますが、中古物件の場合、営業マンは売り手と買い手の間に入る人です。実際に値段を設定するのは売り主ですから、営業マンがどうこうできる部分は少ないのです。もっとも、腕のいい営業マンなら、自分の決めた売値にこだわる売り主をうまく説得して値段を下げさせ、お互い損のないところで取引をまとめるものです。
さらに、大手と地場の不動産屋の大きな違いには、仲介手数料をまけてくれるかどうかという点があります。宅地建物取引業法の簡易計算式によると、仲介手数料は、物件の価格の3%プラス6万円と決まっています(契約金額が400万円以上の場合)。しかし実際は会社の規模にかかわらず、プラスの6万円はまけてくれることが多くなっています。大手では、それ以上の値引きは望めません。その点、地場の不動産屋なら「3%を2%にするから、うちで決めてくれ」ということもあります。
現実的には、「仲介手数料をまけてくれないか」というような交渉ができるのは、不動産投資をしている投資家に限られるでしょう。たとえばなにか事情があって売り主が売り急いでいる場合は、最初から値段を下げざるをえません。そういうおいしい物件を預かった営業マンは、やはり真っ先にお得意さんに持っていくものです。
この場合のお得意さんとは投資家です。一回来てそれっきりという人より、何回も買ってくれる人のところに掘り出しものを持っていくのは、商売として当然です。いきなりヒョコッと行って、お買い得品を出してくれると考えるほうがおかしいのです。中古物件に関しては、素人がお買い得品を買うのは簡単ではないわけです。
※すべて雑誌掲載当時