結果として「視聴者ファースト」に

かつても現在も、マーケティングや流行にとらわれることなく、自分が面白いと思ったものを実現させるために動く佐久間の姿勢は、テレビ業界では異色。視聴率ありきではなく、視聴者の熱や愛着の深さを狙う視聴者ファーストの姿勢が、平成後期から令和にかけての視聴者嗜好しこうにハマってきた感がある。

だから佐久間の手がける番組は放送収入だけではなく、『ウレロ☆』『ゴッドタン』『あちこちオードリー』のようにイベント、配信、映画、舞台などの有料コンテンツ展開で稼げるものが多い。

その視聴者ファーストの先頭にいるのが佐久間本人。プロデューサー・ディレクターでありながら、視聴者としての自分を楽しませるような番組を企画し、現場では誰よりも楽しげに笑っている。だから撮影現場は「佐久間を笑わせよう」とキャストとスタッフの士気が高く、「もうひと笑いさせよう」という前向きな姿勢が見られるという。

テレビ東京の番組は低予算を逆手に取った一点突破型の企画が多く、切り口は斬新でも飽きさせずに毎週最後まで見せ切ることが難しい。

つまり、プロデュースと演出の技術が他局の番組以上に求められるのだが、佐久間はその両方を担うマルチプレーヤーであり、スキルの高さが前提にあることは疑いようのないところだ。

誰よりも現場を楽しんでいる

「現場を楽しむ」という姿勢は佐久間が出演者となった際も変わらない。それが最もわかりやすいのは『佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)』(ニッポン放送)だろうか。当初はフジテレビ系列のラジオ局でテレビ東京の局員がパーソナリティを務めることが驚かれたが、学生時代からラジオ好きの本人にとってはどこよりも楽しい場所のように見える。

もう一つ印象的だったのは、NHKの定番正月番組『新春TV放談』『あたらしいテレビ』に2019年から今年まで4年連続で出演していること。現役の民放局員が他局のコンテンツを語る番組に出るだけでも珍しいのだが、最近では動画配信サービスへの愛をたっぷり語るなど、テレビマンのイメージを覆す姿を見せている。

この1年では日本テレビの番組に連続出演。『アナザースカイ』にメインゲストとして出演したほか、『スッキリ』ではドラマ『真犯人フラグ』の考察コーナーに半年間レギュラー出演し、『踊る!さんま御殿‼』では芸人に近いポジションで笑いを誘っていた。

特筆すべきは人気者になった現在も、気取らず自分を大きく見せようとするところがないこと。それどころか、率先してミーハーになれるなど、バカに見えることを恐れない姿勢が若年層に受け入れられている。事実、『真犯人フラグ』の考察コーナーではノリノリで予想しながら、外しまくり自虐する姿は好感度抜群だった。