「最弱テレビ局」出身のプロデューサーが華々しく転身したワケ
佐久間宣行・46歳。最も有名なのは『ゴッドタン』(テレビ東京系)のプロデューサー・演出家としての顔だろうか。しかし、もはや何がメインフィールドなのかわからないほど、活躍の場は広がっている。
2021年3月のテレビ東京退社後も、『ゴッドタン』『あちこちオードリー』の演出・プロデュースは続行。ラジオでは『佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)』(ニッポン放送)のパーソナリティを務めるほか、動画配信サービスで『トークサバイバー!~トークが面白いと生き残れるドラマ~』(Netflix)、YouTubeで『佐久間宣行のNOBROCK TV』なども手がけている。
YouTubeのチャンネル登録者数は56万2000人、視聴回数は約1億6900万回。さらにツイッターは31万9000フォロワー、インスタグラムは10万8000フォロワー(いずれも原稿執筆時の数値)を数え、いずれも右肩上がりで増え続けている。また、昨年行われた『あちこちオードリー』の配信ライブは8万4000枚を売り上げて「2021年番組オンラインイベント1位」の座を獲得していた。
クリエイターだけでなくキャストとしての活躍も増え、今年に入ってからだけでも『スッキリ』、『踊る!さんま御殿‼』(ともに日本テレビ系)などに出演。さらに映画『ストレンジャー・シングス 未知の世界 シーズン4』ではゲスト声優も務めた。書籍を出せばヒットし、2022年7月にはアイドルプロデュースのプロジェクトもスタートするなど、その影響力は増す一方と言っていいだろう。
かつて民放キー局の中で「最弱」「番外地」と言われたテレビ東京の社員に過ぎなかった佐久間がなぜ時代を象徴するほどの存在になったのか。あらためて、その成功の理由を掘り下げていきたい。
企画で大事なことは「通る」「通らない」ではない
現在こそテレビ東京は「面白い番組が多い」などと言われているが、かつてはお笑い系のバラエティがほとんどなく、業界内で「最弱」「番外地」と言われていた。その状態を変えたのが佐久間宣行という声が多い。
もともとテレビ東京は、制作費、スタッフ数、ローカル系列局のすべてが民放他局より大幅に少なく、実現できる企画の幅が狭かった。しかし、佐久間は20代のころから「通る」「通らない」を別にしてお笑い系企画を提案し続けてきたことをこれまで何度も明かしている。
「通らない」を「失敗」や「評価ダウン」と思わず続けられることが成功の要因であり、意志の強さと視野の広さを象徴。佐久間はまず上司たちに「お笑い系の番組、特にコントがやりたい」という意志を伝えて自身を印象づけることに成功していた。
その上で、お笑い好きのターゲット層を狙う枠が新設されるときや、お笑いに興味があるスポンサーが見つかったときなどのタイミングで実現させていったという。