どうすればイノベーションは生まれるのか。京都先端科学大学ビジネススクールの名和高司教授は「経済学者のシュンペーターは、イノベーションとはゼロからの創造ではなく、既存のものの組み合わせだと説いた。成熟企業は新規事業の模索より、強みの深掘りに力を入れたほうがいい」という――。(第2回)

※本稿は、名和高司『資本主義の先を予言した 史上最高の経済学者 シュンペーター』(日経BP)の一部を再編集したものです。

コワーキングスペースでプレゼンテーションを行うビジネスマン
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イノベーションは「自分の中から展開する」

イノベーション理論の生みの親であるオーストリアの経済学者・シュンペーターの本のタイトル『経済発展の理論』には、「発展」という言葉が使われています。イノベーションを強調するのであれば、「革命」という勇ましい言葉の方が、しっくりくると思いませんか。

なぜシュンペーターは、発展という言葉を選んだのでしょうか?

ここで、ちょっと回り道をして、原語に立ち返ってみましょう。

この本はドイツ語で書かれています。「発展」にあたる言葉は「entwickeln」です。「ent(脱)+wickeln(巻く)」、すなわち「巻かれた糸玉をほどき広げていく」というイメージです。

ここでカギとなるのは、「ゼロからの創造」ではないという点です。あくまでも「対象や自分自身の中にあるものを展開する」ということです。

本書の英語訳は「development」となっています。語源を紐解くと、「de(外へ)」+「velop(包む)」、すなわち「包みを解く」ことです。こちらもまさに、「ゼロからの創造」ではなく、「対象や自分自身の中にあるものを掘り出す」という意味になります。どうですか?

物事の本質を探るときには、言葉の語源に立ち返ってみる必要があることを実感していただいたでしょうか?