社会実装とスケールアップが大事

ここまで理解できると、第二のメッセージが導き出されます。それは、イノベーションの本質とは「社会実装し、さらにスケールさせることにある」という点です。

前述の通り、「0→1」はゴミの山を作るだけです。イノベーションの要諦は、そのあとの「1→10」、すなわち社会実装、さらには「10→100」、すなわち大きく「スケール」させて世の中のデファクトを目指すことです。

ノートを破って丸めたゴミ
写真=iStock.com/seb_ra
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社会実装するためには、顧客が新しい価値を高く評価することが大切です。そして、もちろん価値を提供し続けるためのしくみも整備する必要があります。

しかし、それだけではありません。しっかりマネタイズすることで利潤を生み、それを再投資していくことが求められます。現代の経営用語でいえば、マーケティング、サプライチェーン、そしてビジネスモデルの構築が不可欠です。

シュンペーター直系のイノベーションの思想家ピーター・ドラッカーは、これらをひっくるめて「マネジメント」と呼びました。言い換えれば、イノベーションを実践するためには、マネジメントが求められるのです。「スケール」ができるかどうかが、ベンチャー企業の最大のポイントです。

0→1の起業に成功したと思ったのもつかの間、マネジメント能力が欠如しているために、大半のベンチャーが市場から消えていきます。これではアイディアのゴミの山だけでなく、ベンチャーのゴミの山ができてしまいます。

イノベーションこそが利潤を生む

シュンペーターは、利潤こそが経済成長を生むと論じました。

ここも、マルクスの思想との大きな分水れいです。マルクスが言ったのは、「労働の搾取から利潤が生まれる」でしたが、シュンペーターはイノベーションこそが利潤を生むと考えたのです。

経済発展の理論』の中でも、次のように語っています。

《発展なしには企業者利潤はなく、企業者利潤なしには発展はない》

その利潤を事業に再投資することでスケールさせることによって初めて、イノベーションは社会を大きく変革するパワーとなると説いたのです。イノベーションの本質は、「創業」ではなく、「社会実装」と「スケール化」させることにある――このシュンペーターの教えを、私たちはしっかり肝に銘じる必要があります。