「ニコン、一眼レフ開発撤退」
7月中旬、ネットニュース上にそんな記事の見出しが踊った。
これにはカメラ愛好家だけでなく一般にも大きな衝撃を与えるとともに、筆者も長年カメラ雑誌「アサヒカメラ」で執筆していた身として一抹の寂しさを覚えた。
だが、ニコンは公式サイトですぐさま「本日の一部報道について」と題して見解をアナウンス。記事の内容はニコンが発表したものではないとしたうえで、「デジタル一眼レフカメラの生産、販売、サポートは継続しており、ご愛用のお客様には引き続きご安心してご利用頂ければと思います」と記した。あらためて今回の報道についてニコンイメージングジャパン広報部に尋ねると、「現在開発を『停止』している状況で、開発を『終了』はしておりません」と答えた。
ニコンの業績は一時落ち込んでいたが、現在は回復しつつある。それをけん引しているのがカメラ事業であり、「Z9」などミラーレスカメラが主力製品となっている。ゆえに、一眼レフの開発が事実上終了したと世間で見られるのも、不思議ではない。
AERA dot.は今回、長年、ニコンで主要一眼レフの開発を手がけてきた後藤哲朗さんにインタビュー。2004年から執行役員兼開発本部長として映像全製品の開発設計を統括し、映像カンパニー副プレジデント、ニコンイメージングジャパン会長などを歴任した。後藤さんにニコン一眼レフの歴史的意義をたずねるとともに、開発の思い出を語ってもらった。
カメラを中心とするニコンの映像事業が好調だ。同事業部はこれまで2期連続で赤字を計上していたが、2022年3月期の売上収益は1782億3400万円、前期比18.7%の増加となった。
ニコンによると、構造改革とプロと趣味層にフォーカスした事業戦略などの実行により、安定的な黒字確保が可能な体質に変化したという。その中核製品がミラーレスカメラ「Zシリーズ」。特に最高級モデルのZ9が好評で、勢いに乗っている。