ニコンF
写真提供=AERA dot.
ニコンF

一方、その陰で一眼レフ「Dシリーズ」の開発を止めている。ただ、現行製品である最高級一眼レフD6を始め、D850、D7500などはこれまでと同様に販売される。アフターサービスも継続される。

歴史的役割を終えた一眼レフ

1980年発売のニコンF3の開発以来、40年以上にわたり一眼レフの設計に携わってきた後藤哲朗さんは今回の開発停止について、こう語った。

「一眼レフの『歴史的』な役割はもうとっくに終えているのではないでしょうか。というのも一眼レフの性能はもう行き着くところまで行きましたから、もうこれで十分だと思うのです。ですから、今後はミラーレスのZシリーズがそれを受け継げばよいのです」

デバイスとソフトウェアの進化によって、ミラーレスは一眼レフをさらに超えて行くという。

「これまでお客様がもっとも気にされてきたのはファインダーの見え方です。被写体の光がそのまま見える一眼レフの光学ファインダーは映像表現にはなくてはならないものでした。それがZ9の電子ビューファインダーを覗くと、光のまばゆさを感じるほど自然な見え方が実現できています」

一眼レフの構造は複雑で、高速で作動するミラーをはじめ、いくつものセンサーが組み込まれている。複数のセンサーから得られたデータをズレなく処理することに難しさがあった。一方、ミラーレスは画像センサーがオートフォーカスやAEなどさまざまなセンサーを兼ねているため、構造をシンプルにでき、データの正確さも増す。

「つまり、ミラーレスはそれまで一眼レフの欠点とされてきたことを克服しているわけです。レンズとセンサーの距離『フランジバック』が短いからカメラは薄くなるし、軽くできる。ですから、ファインダーが一眼レフとそん色なくなれば、ミラーレスの優位性が際立ってくる。ただ一眼レフ特有の心地よさは別ですが」

「車と交換してほしい」ニコンF

一眼レフは、半世紀以上もニコンの屋台骨を支えてきた。

その第一号機が1959年に発売されたニコンFである。外観は64年の東京五輪のポスターで知られるデザイナー亀倉雄策が担当した。