雑談を上手にするにはどうしらいいのか。政治家や企業幹部などVIPを対象にした“話し方の家庭教師”を務める岡本純子さんは「聞き手の心をわしづかみにするには、ぐだぐだした話は厳禁です。失敗談など相手の興味を引く組み立てや、話の冒頭に『えっ、なになに?』と相手の耳がダンボになってしまうささやき言葉を使うといい」という――。

※本稿は、岡本純子『世界最高の雑談力』(東洋経済新報社)の一部を再編集したものです。

内緒話をする人
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人を惹きつけるストーリーの作り方

第1章でも少し紹介しましたが、私は社長や企業幹部に加えて、政治家の話し方の家庭教師もよくお引き受けしています。

政治家によくする「2つの話し方のアドバイス」

ですから、政治家のみなさんには、つまらない政策についてぐだぐだ話をするのはやめて焦点を絞ると同時に、「ストーリー」を話してくださいとアドバイスしています。ストーリーというのは、簡単にいえば、人を楽しませたり、興味を引いたりするように組み立てられたお話のことです。

データや数字、抽象的な言葉は、人の心になかなか刺さらないものです。でも、ストーリーを聞くと、人は、興奮やドキドキをもたらすアドレナリンや、ホッとさせるオキシトシンなどの脳内ホルモンが活発になり、ジェットコースターに乗せられたように、感情が刺激されます。

まるで、主人公の感情の流れに入り込んだかのように、ハラハラ、ドキドキを体感し、悲しみや驚きに共感するのです。

主人公のBeforeとAfterがよく見えるものが魅力的

つまり、ストーリーは聞き手の脳をハッキングするほどの効果があるということです。「ストーリーを語る人と聞く人とでは脳波が同期する」という研究もあります。だからこそストーリーは、記憶に残りやすく、理解がしやすい。

とくにわかりやすいのが、困難や課題、チャレンジを乗り越えて、主人公が気づきを得たり、成長したり、変化をするもの。主人公のBeforeとAfterがよく見えるものが魅力的なストーリーです。

(Before)私は昔、人見知りで、話し下手で、臆病だった。
(After)でも、ニューヨークで「コミュ力修業」をして、自分の殻を破ることができた。
(気づき)コミュニケーション力は誰でもいつからでも鍛えられることに気づいた。

たいした話ではなくてもいいんです。

堅苦しい話ばかりでなく、こうした小さな物語をちりばめてください。「素の自分」「人間臭い自分」が垣間見える話し方、とくに成功談より失敗談など、カッコつけない「ぶっちゃけトーク」が聞き手を魅了するのです。