「これで十分」と思ったら、人間はそこでおしまい

だから、どんな仲間を集めるかというのも、志を大きくしていくには大切な要素になってくるのです。「ぜひ自分はもっと大きな会社で働きたい」とか、「もっと成長を加速したい」「一緒にやりたい」という人が集まってきて、志は大きくなっていくのです。

今でも私は中小企業規模で満足している人とは付き合いません。ソフトバンクの孫正義さんや、ファーストリテイリングの柳井正さんのような人たちとばかり付き合っているから、はたから見たら、とても実現できるとは思えないくらいの目標を掲げるなど、ホラの吹き合いのように見えるかもしれませんが、ソフトバンクも、ファーストリテイリングも成長しています。

ですから、みなさんも志があるなら、何歳になろうとも自分の志を大きくしていただきたいと思います。「これで十分」と思ったら、そこでおしまいです。

危機感を「悲愴感」に変えてはいけない

危機感を振りかざすときには、必ず夢と一緒に語らないといけない――。危機感だけでは、必ず最後は悲愴ひそう感のところへ行ってしまうからです。

頭を抱えているビジネスマン
写真=iStock.com/kuppa_rock
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以前、注文が取れずに非常に苦労している現場の役員が、急に明るい顔になったことがありました。それもそのはずで、長らく低迷していた営業成績が上向き、「あっちでも注文を取った! こっちでも注文を取った!」というように、明るい話題がずいぶん出てきたので、顔色もよくなったのでしょう。

そのとき私は、その役員に「君、去年の今頃は、不幸ごとがあったような暗い顔をしていたけれど、今日はやっと普通に戻ったな。次、来るときには結婚式場の職員の顔になってから出てこい」と言いました。

要するに、去年はよい要素が何も出てこないものだから、危機感を抱いていたわけです。危機感を持つことは悪いことではないのですが、その塩梅が大切で、危機感を通り越して、組織全体を悲愴感が覆い尽くしてしまうのはよくありません。

「足元悲観、将来楽観」が基本

もし、「このままでは売上はずっと伸びないのではないか」という思いが頭をよぎったなら、そのときには夢を語る必要があります。「夢」と「危機感」は表裏一体ですから、危機感を語るときは、夢とセットでなければなりません。厳しい話をしないといけないときは、「将来は明るいぞ」と夢を語る。「足元悲観、将来楽観」が基本なのです。「ここを乗り切れなかったらどうなるんでしょうか?」と言われて、「それはつぶれるわな」というような話だけではダメということです。

そうではなく、「これは今、大変なことになっているぞ。ここで注文が取れなかったら、どうなるかわかっているな。しかし、わが社がやっているビジネスは、これからの時流に合ったものであり、今ここを乗り切ったら、いい方向に変わっていけるんだ」という話をしなければならない。

実際、危機感だけを話している例は多い。そうではなく、最初に危機感をパッと述べたあとに、「でも、先は明るい。やっと春が来るぞ」という話をして終わるようにしていただきたいと思います。

そして、状況がよくなってきたら、今度は逆の発想が大切になります。よくなってきたときに、調子のいい話だけをしては、みんな浮き足立って天狗になってしまうので、「これくらいで調子に乗っているのか? これは危ないぞ」と言って、危機感を醸成しなければなりません。