20~30年後のノーベル賞受賞者は中国人だらけになる?

一方でノーベル賞の受賞者も中国人に独占される可能性が出てきました。

京都大学特別教授の本庶佑ほんじょ たすくさんが2018年のノーベル生理学・医学賞に選ばれました。がんの新たな治療に関わる研究が評価されたのです。本庶さんは、がん細胞と戦う免疫細胞にブレーキがあることを発見しました。がん細胞がそのブレーキを踏み、免疫細胞からの攻撃をかわしていたのです。

そういう仕組みがわかったので、ブレーキがかからないように蓋をしてしまえば、がん細胞が免疫細胞を止めることができず、活発にがん細胞をやっつけることができる。こうした治療法を発見したことが、新たながん治療薬の開発につながりました。

本庶さんにしてみれば、「がん細胞って、そもそもどういう仕組みになっているのだろう」「免疫細胞は?」と、ひたすら研究を続けていたのです。「どうしたらがんを退治することができるのだろうか」の前に、もっと根本のことを考えていたのです。基礎研究というのは、そういうものです。

日本のノーベル賞は30年前の基礎研究費に支えられている

本庶さんは受賞後、あらためて欧米に比べて少ない基礎研究への投資の必要性について訴えました。「自動車とか、ITとか、そういう産業が国を支えていますが、なんといっても生命科学、ライフサイエンスに投資しない国は未来がないと思います」と。

日本人のノーベル賞受賞者は本庶さんで24人目(アメリカ国籍取得者を含むと26人)。その後も2019年に吉野彰よしの あきらさんがノーベル化学賞、2021年に真鍋淑郎まなべ しゅくろうさんがノーベル物理学賞を受賞していますので、25人(アメリカ国籍を含むと28人)になりました。

日本は今後もノーベル賞の受賞者を輩出し続けることができるのか。実は本庶さんのノーベル賞の対象となった研究は30年前の研究なのです。日本人が毎年のように受賞をしているのは、30年前、40年前の研究の成果です。日本はそのころ、基礎研究にお金を投資していました。

しかしいま、国立大学法人運営費交付金は1%ずつ減り続けています。2004年から1%ずつです。「後は自分で何とかしなさい」ということです。

いま全国の研究者たちが科学研究費の申請書を書くのに追われています。助手も雇わなければいけないし、研究者たちはみんな科研費を取ることに一生懸命で、研究をする暇がないのが現状です。申請すれば必ずお金がもらえるわけでもありません。