30年前、芸能界を揺るがす大騒動に発展した
桜田淳子・山崎浩子・飯星景子。
安倍晋三元首相を狙撃した山上徹也容疑者(41)が取り調べで、犯行の動機をこう語ったという。母親が宗教にのめり込み、財産をつぎ込んだため悲惨な子ども時代を過ごし、教団に恨みを持った。その宗教団体のトップを殺そうと思ったがコロナ禍で日本に来ないので、教団と関係がある安倍元首相を殺そうと考えたというものだった。それを聞いた私は、すぐにこの3人の名前が脳裏に浮かんだ。
警察は、参議院選が終わるのを待っていたのであろう、この宗教団体が世界平和統一家庭連合(旧統一教会=正式名称は世界基督教統一神霊協会。以下、統一教会)であることを発表した。
いまから30年ほど前、当時、統一教会という新興宗教に入信、桜田を除いた2人の脱会をめぐって、週刊誌やテレビが大騒ぎしたことを覚えている人は少なくなってしまった。
統一教会と安倍元首相との関係は、週刊文春(7月21日号)で統一教会関係者がいっているように、
「統一教会は古くから保守政治家との関係が近かったのは事実です。その基盤は、一九六八年に創始者・文鮮明氏が設立した、反共産主義を掲げる政治団体『国際勝共連合』。“戦後のフィクサー”笹川良一氏が名誉会長に就き、笹川氏との交友で知られた岸信介元首相も勝共連合の設立に尽力したとされています」
当時の大学生の間で「原理研」が人気に
岸の孫である安倍元首相との関係はさまざまいわれている。霊感商法などで世論の厳しい批判を受けた統一教会は名称変更をしようとしたがなかなか認められなかった。宗教団体が名称を変えるなどということは極めて異例で、何としてでも悪い評判が染みついた教団名を変えたかったのだろう。文化庁がこれを承認したのは安倍政権時代になってからだった。
私が学生だった頃、東大生の間で「原理研」が人気だという記事が新聞に出たことがあった。統一教会の文鮮明総裁(当時)が提唱する考えだが、私がいた早稲田大学にもあり、活発に活動していたという。
統一教会の悪名を広く知らしめたのは、1980年代中頃から『朝日ジャーナル』(朝日新聞社・休刊)が始めた「霊感商法」批判キャンペーンであった。
霊感商法とは、「人の不幸に付け込み、その不幸の原因が先祖の因縁に理由があると不安を煽り、壺や多宝塔、一和(韓国の関連企業=編集部注)の高麗人参濃縮液などを原価の数十倍から数百倍で売り付ける」ものだと、ジャーナリストで元参院議員の有田芳生と週刊文春取材班の共著となる『脱会 山崎浩子・飯星景子報道全記録』(教育資料出版会)に書かれている。
朝日新聞社が1987年6月に集計したところによると、1984年4月以降の被害は全都道府県で1万3000件、180億円にのぼったという。1987年の衆議院特別委員会で警察庁も、「各種の悪質商法の中でも最も悪質」だと答弁している。