「米政界と旧統一教会の関係」が次々に報じられる

7月8日に安倍晋三元首相が殺害されたというニュースは、アメリカでも翌日、一面で報じられた。日本と少し違うところは、安倍氏の実績や銃撃の模様というよりも、安倍氏との関係が取り沙汰されている旧統一教会(世界平和統一家庭連合、以下統一教会)に関する報道が増えていることだ。

2019年9月25日、ニューヨークで行われた国連総会の際の会談で握手するドナルド・トランプ前米大統領と日本の安倍晋三元首相。ドナルド・トランプ米大統領は2020年8月30日、退任する安倍晋三首相を「日本史上最高の政府首脳」と称賛した。
写真=AFP/時事通信フォト
2019年9月25日、ニューヨークで行われた国連総会の際の会談で握手するドナルド・トランプ前米大統領と日本の安倍晋三元首相。ドナルド・トランプ米大統領は2020年8月30日、退任する安倍晋三首相を「日本史上最高の政府首脳」と称賛した。

日本と同様に、アメリカの政界にもさまざま宗教団体が深く関わっている。大勢の信者で支持基盤を固められれば選挙に勝ちやすいし、日本以上に寄付文化が発達しているので政治資金を集めやすい。中でも統一教会とアメリカ政界の関係は歴史が長く、特に保守政党・共和党に対し大きな影響力を持っている。この深い関係を暴こうとしている報道が少なくないのだ。

まず安倍氏の銃撃事件で、いち早く興味深い報道をしたのはブルームバーグだった。9日付記事のタイトルは「安倍氏の死は、彼を批判してきた弱小党にスポットを当てた」。これはNHK党のことを指す。

記事では、NHK党の黒川敦彦幹事長が、選挙運動中のテレビ討論会で行った発言を取り上げている。安倍氏が特定の宗教団体に不明瞭な寄付をしており、その団体は外国のスパイとして利用されている疑いがある――という趣旨の内容を語って炎上したと伝えた。

また同じ場面で、安倍氏の祖父の岸信介氏が、統一教会を韓国から日本に持ち込んだことを批判した、とも報じている。

同記事はさらに、昨年9月18日付の日本共産党の機関紙「赤旗」の記事を取り上げている。安倍氏が統一教会に関連する団体のイベントに、祝福のビデオメッセージを送ったという内容だ。

同一団体のイベントに半年間で2回出演

このイベントについて調べると、催しを全編収録した動画が検索に引っかかった。

統一教会の関連団体Universal Peace Federation(UPF=天宙平和連合)が昨年9月11日に開催した、「Rally for Hope(訳=希望への集会)」というものだ。安倍元首相はビデオメッセージを寄せ、「UPFとともに世界各地の紛争の解決、とりわけ朝鮮半島の平和的統一に向けて努力されてきた韓鶴子総裁をはじめ、皆さまに敬意を表します」と発言している。

さらに別の動画も見つかった。こちらは今年2月、やはりUPF主催の「Summit for Peace of Korean Peninsula(訳=朝鮮半島平和サミット)」で、ここにも安倍元首相がメッセージを寄せていた。司会者が読みあげる形で、その背景には巨大な安倍氏の写真が掲げられている。

特定の団体のイベントに、わずか半年の間に2度出演というのは、なかなかの頻度にも感じられる。