トランプ元大統領は文鮮明氏に「感謝している」

実はこの2回のイベントには、他にも世界的なリーダーが出演していた。ドナルド・トランプ前大統領だ。

トランプ氏はいずれも基調講演者として出演し「UPF、特に韓鶴子総裁が、世界平和に果たしてきた功績に感謝したい」などと述べている。

これを報じたビジネスインサイダーは、トランプ大統領が1991年、フロリダの別荘「マールアラーゴ」を文鮮明(統一教会創始者)に売却することを考えていたとし、関係が長いことを伝えている。

さらに、この催しにアメリカから参加していた政治家は、トランプ氏だけではなかった。ペンス元副大統領、チェイニー元副大統領の姿も見えた。共和党の新旧重鎮が登場したことで、統一教会と共和党、とりわけタカ派との深い関係が憶測される。

その食い込み方は、トランプ氏のスピーチからも分かる。

「文鮮明がワシントン・タイムズを設立してくれたことにも感謝している」

ワシントン・タイムズは、フォックス・ニュースなどと並ぶアメリカの保守メディアで、トランプ氏の大統領当選にも貢献した。アメリカではカルト宗教と呼ばれることも多い団体が、このようなメディアを押さえているという事実は、アメリカ国民にはあまり知られていない。

「反共主義」を掲げ、冷戦時代に政界に接近

統一教会とアメリカ保守政治との関係は冷戦時代にさかのぼる。

1950年代からアメリカで布教活動を始めた文鮮明は、1970年代にアメリカに移住、その影響力を政治の分野でも強めていく。

1974年、ウォーターゲート事件で大統領弾劾の危機にあったニクソン元大統領を擁護するために、統一教会は信者に呼びかけ議会前で3日間のストライキを行った。その後ニクソン氏は文鮮明氏に対し公式に感謝の言葉を送っている。この事実が主要メディアで報道され、統一教会の存在はアメリカ国内で一気に知られることとなった。

1982年文鮮明は、アメリカの首都に新聞ワシントン・タイムズを設立。共産主義と戦う保守メディアとして、レーガン、H.W.ブッシュの2人の共和党元大統領から、強い支持を受けた。冷戦時代の脅威だった共産主義との戦いという旗の下に、アメリカの政治や文化にも入り込んでいった様子がよく分かる。

1977年、米下院の委員会は、韓国中央情報部(KCIA、当時)が教会のボランティアを利用して、米国政治に影響を及ぼそうとしていたと報告。90年代になると、1995年H.W.ブッシュ元大統領とバーバラ夫人が、東京ドームで行われた韓鶴子氏主催のWomen's Federation for World Peace(世界平和女性連合)集会に参加している。当時その様子を伝えたニューヨーク・タイムズは、この時を「訪日の最大の驚き」と表現している。