なぜ日本の警察は安倍元首相を守れなかったのか
安倍晋三元首相が奈良市での遊説中、銃撃を受けて死亡した。日本は犯罪率の低い安全な国として知られているが、そんな日本で発生したショッキングな襲撃事件として、海外にも驚きが広がっている。
岸田文雄首相は14日の記者会見で、「率直に言って警備体制に問題があったと考えている」と話し、政府として警備体制の不備を認めた。
交差点を背に演説する安倍元首相の後ろはがら空きとなっており、容易に接近することができた。また安倍元首相を囲む警護員らは前方を注視しており、離れた場所に警官が配置されているとはいえ、後ろからの狙撃はほぼ想定していなかったかのようだ。
こうした点に海外報道では、「(アメリカの基準からすると)ほとんど真剣だとは思えないほど緩い」との指摘も出ている。安倍元首相の警護は明らかな失敗だったと報じるメディアもある。
米メディアが報じた「警備上の複数のミス」
銃社会のアメリカで、メディアは警備体制をどのように報じたのだろうか。米保守派メディアのワシントン・エグザミナー誌は、警備体制には複数の失敗が重なったと指摘する。記事の著者は、同紙で国家安全保障を専門としている記者だ。
記事は初めに妥当だった点として、警視庁警備部が警護を担当していた点を挙げている。現場には奈良県警の警察官のほか、警視庁のSPも配置されていた。首都圏警察の専門部隊が警護に当たるのは、ロンドン警視庁の警護課が王族や首相、元首相などを警護しているのと同じ構図だという。
しかし、結果として凶弾は放たれてしまった。同誌が指摘する最大の敗因は、警護員と安倍元首相のあいだに距離がありすぎ、即座に取り囲んで壁を構築できなかった点にあるという。