なぜ日本の警察は安倍元首相を守れなかったのか

安倍晋三元首相が奈良市での遊説中、銃撃を受けて死亡した。日本は犯罪率の低い安全な国として知られているが、そんな日本で発生したショッキングな襲撃事件として、海外にも驚きが広がっている。

参院選の遊説中に銃撃を受けて亡くなった自民党の安倍晋三元首相の通夜が2022年7月11日夜、東京・芝公園の増上寺でしめやかに営まれた。喪主は妻の昭恵さん。岸田文雄首相や自民党の麻生太郎副総裁らが参列し、歴代最長の政権を築き上げた安倍氏との別れを惜しんだ。
写真=AFP/時事通信フォト
参院選の遊説中に銃撃を受けて亡くなった自民党の安倍晋三元首相の通夜が2022年7月11日夜、東京・芝公園の増上寺でしめやかに営まれた。喪主は妻の昭恵さん。岸田文雄首相や自民党の麻生太郎副総裁らが参列し、歴代最長の政権を築き上げた安倍氏との別れを惜しんだ。

岸田文雄首相は14日の記者会見で、「率直に言って警備体制に問題があったと考えている」と話し、政府として警備体制の不備を認めた。

交差点を背に演説する安倍元首相の後ろはがら空きとなっており、容易に接近することができた。また安倍元首相を囲む警護員らは前方を注視しており、離れた場所に警官が配置されているとはいえ、後ろからの狙撃はほぼ想定していなかったかのようだ。

こうした点に海外報道では、「(アメリカの基準からすると)ほとんど真剣だとは思えないほど緩い」との指摘も出ている。安倍元首相の警護は明らかな失敗だったと報じるメディアもある。

米メディアが報じた「警備上の複数のミス」

銃社会のアメリカで、メディアは警備体制をどのように報じたのだろうか。米保守派メディアのワシントン・エグザミナー誌は、警備体制には複数の失敗が重なったと指摘する。記事の著者は、同紙で国家安全保障を専門としている記者だ。

記事は初めに妥当だった点として、警視庁警備部が警護を担当していた点を挙げている。現場には奈良県警の警察官のほか、警視庁のSPも配置されていた。首都圏警察の専門部隊が警護に当たるのは、ロンドン警視庁の警護課が王族や首相、元首相などを警護しているのと同じ構図だという。

しかし、結果として凶弾は放たれてしまった。同誌が指摘する最大の敗因は、警護員と安倍元首相のあいだに距離がありすぎ、即座に取り囲んで壁を構築できなかった点にあるという。