警察の事情聴取を脅しのように使っている

乗客「4万円も財布から出てたんですよ」
駅員「相当高くついちゃってるぞ、これ。止めてんだからよ、電車」
(中略)
駅員「いいよ、後で見るから。とりあえず交番行くからな。待っとけ」
乗客「なんで交番行くんですか?」
駅員「よく考えてみろ、電車止まってんだよ」
乗客「取ってくれないからじゃないですか」
駅員「そういう態度、何とかせぇよ、お前」
乗客「なんで僕、交番に行かなきゃいけないんですか?」
駅員「当たり前だろ、電車止めてんだよ。山手線、止めてんだよ‼」
乗客「取ってくれないじゃないですか、ずっと」
別の駅員「取るために来たんですよ」
乗客「帰ったじゃないですか」
別の駅員「今、来たんですよ」
駅員「きょう、帰れねぇからな。悪いけど。警察行くから、きょう、帰れない。事情聴取なげぇから」

列車の運行を止めるために非常停止ボタンを扱えば法令に抵触する可能性があり、警察に同行を求めることは自然である。また列車が運転を見合わせて損害が生じた場合、賠償請求される可能性もある。だが、それらが確定していない段階で懲罰的に言及すること、ましてや警察の事情聴取を脅しのように使うことは不適当であった。

駅員の責任を追及したいのではない。余計な発言により、さらなるトラブルに巻き込まれ、駅員自身が不利益を被らないための自衛策として強調したいのである。

乗客に強く出ても許される場面とは?

では駅員が強く出ていい場面というのはあるのだろうか。駅員の旅客対応は基本的には常に丁寧な口調であるべきだと筆者は考えるが、例えばホームの端を歩く旅客が列車に接触しそうになるなど緊急かつ安全にかかわるケースでは「危ない」「下がって」など大きな声で注意を促すことはあり得るだろう。

駅のホームで電車の中から安全確認する車掌
写真=iStock.com/coward_lion
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また暴力行為に及ぼうとしたり、今回のように不必要に非常停止ボタンを押したりするなど運行を妨害しようとした旅客に対しては、身体をつかむなどして制止することもある。筆者は、駅員は常に敬語を用いるべきだとか、どんな場面でも下手に出なければならないと主張したいのではなく、必要のないことをする理由はないと言いたいのである。

それでも駅員は人間である。身勝手な行為や理不尽な要求に腹を立てることはあるだろう。筆者も駅に立って旅客対応をした経験があるが、一方的なクレームに辟易したことは少なくないし、腹を立てたこともある。腹を立てることが問題だというのではない。