激高する駅員を擁護する声も多いが…

話は戻り、動画は非常停止ボタンを扱った直後から撮影されたとみられ、乗客が線路に降りようとし、非常ボタンを押した場面は含まれていない。駅員の激しい口調はこれらの乗客の身勝手な振る舞いの結果であり、動画はその部分を切り出しただけなのだから駅員の対応に問題はないとして駅員を擁護する声も多い。

筆者は7月6日、J-CASTニュースにコメントを求められ、本件は非常停止ボタンの目的外使用であり、運行を妨げる意図で行われた許されない行為であることを前提に、駅員の発言があまりに感情的であると指摘したが、「乗客を正当化するのか」「駅員を責めるのか」といった反発の声も多く寄せられた。短いコメントでは伝えきれなかった部分を改めて丁寧に論じていきたい。

筆者が気になったのは、例えば次のようなやりとりである。

駅員「あぶねぇぞ、オラ!」
乗客「お金取ってくれないじゃないですか」
駅員「取るよ! 何なんだ、その態度は」
乗客「何で取ってくれないんですか」
駅員「お前が落としたんだろうが、まずは」
乗客「だから、なんで取ってくれないんですか」
駅員「そういう態度はなんだよ。取ってもらおうって態度じゃねぇだろ」
乗客「お願いしたじゃないですか、ずっと」
駅員「お願いする態度か!」

落としたことにまで怒る必要があるのか

駅員は乗客の態度が悪いと咎めるが、お願いする態度が悪いから対応しないということはあり得ない。もちろん駅員の本意はそうではないだろうが、そのように受け止められる発言は、やはり適切ではなかったと言わざるを得ない。

頻繁に電車が行き交う時間帯に線路上の遺失物を回収することは難しく、電車を止めて回収することはできない。そのため日中に申し出を受けたとしても回収するのは終電後というケースは珍しくない。

次のやりとりに見られるように、乗客はサイフが落ちたのは自分の責任ではないと主張するが、誰の責任であろうと対応は変わらない。

駅員「誰がまず悪いよ?」
乗客「押されたんですよ」
駅員「言ってみろ」
乗客「押されたんですよ」
駅員「人のせいにすんな」
乗客「押されたんです」
駅員「人のせいにすんな。まず誰が落としたのが悪い?」
乗客「押されたんですよ」

乗客がサイフを落としたことが発端とはいえ、サイフを落としたことが悪いのではなく、サイフを拾いたい(拾ってもらいたい)があまりにとった身勝手な行動が悪いのである。感情的なやりとりは本来、必要のないものだった。

また次のやりとりも踏み込みすぎている感がある。