競合比3倍の重量取扱量はイオン抜く

食べ物、飲み物が280円均一(税込294円)。焼き鳥チェーン「鳥貴族」(社名同、本社大阪市)のウリである。同社はデフレに乗じた新顔ではない。バブル期以前の1985年、創業者・大倉忠司社長が、全品250円(内税)均一を掲げて立ち上げた筋金入りだ。

東京・高円寺北口店の平館奈々子店長代理(写真、20歳)。現在の店舗数は160超(FC店含む)。6年後までに1000店を目指す。

2003年、大阪・道頓堀に出店して知名度を上げ、05年に首都圏進出。07年~09年7月期の売上高は19億円、28.8億円、43.3億円(民間調査会社調べ)と急上昇中だ。

2名で都内の某店舗に入ってみた。客は20~30代のスーツ姿が大半。黒いTシャツ姿の従業員たちも大半は20代だ。

香ばしい匂いと威勢のいい掛け声を背にメニューを広げると、確かにどれも2串1皿で280円。焼き鳥各種に特大の「貴族焼き」、おかわり自由のキャベツ盛、鳥釜飯等々、価格からは想像もつかぬ味と量だ。発泡酒の大ジョッキ、カップ酒、「山崎10年」「吉兆宝山」も堪能。レジ機から長く垂れたレシートの金額は約5300円。ちょっと感動モノだった。

「まず価格ありき。これくらい安くなければお客様は感動しません。90年前後のバブル期はあまり受けなかったのですが、高級店は一切出すつもりはありませんでした。97年4月に消費税率が3%から5%に上がった際、今の280円にしたのがこれまでの唯一の値上げ」

と語る当の大倉社長は、「価格決定権を消費者に」というダイエー創業者・故中内功氏の言葉に感動し、実践しているという。不況で取材が増えたが、やることは変わらない。「安売りの仕組みを教えてくれ」という質問が困る、と笑う。