日本のエアラインには自分たちではコントロールできない重い足かせがある。日本とアメリカにしかない航空機燃料税や世界平均の3倍もの高額な着陸料、カウンター使用料など空港施設に関する諸々の経費、いわゆるジャパンコストだ(図)。高い公租公課はLCCの成長を妨げる。中距離路線のLCCであるエアアジアXも空港税や燃油税の高さから、クアラルンプール-ロンドン、パリ線からの撤退を余儀なくされた。
もしジャパンコストが低減すれば、LCCはインパクトのある価格をより多くの客に提示できる。飛行機とは縁がなかった層がなだれ込むかもしれない。しかし、現実は茨の道だ。
10年5月の国土交通省成長戦略会議では、LCC参入促進によるメリットを拡大するため、着陸料の再構築やLCCの参入促進などにつながる環境整備がテーマとして掲げられたものの、足踏み状態が続いている。時間帯別着陸料の交渉を持ちかけるなど個別交渉は進んでいるが、航空行政の動きは鈍い。ソウルの仁川国際空港が、新規就航や便数を増やすエアラインなどに対して、3年間の着陸料減免措置を実施し(初年度は無料)、国をあげて航空市場の活性化に努めている動きとは対照的だ。
紀氏はこんなケースを予想する。
「怖いのは日本のLCCがもたもたしている間に、外資のLCCがたとえばトヨタのような巨大な異業種企業と組んで国内線に進出すること。これは脅威です」
折しも、茨城空港など国内3空港に乗り入れている中国の春秋航空が、東京、名古屋、大阪など路線拡大に意欲を燃やし、日本でLCCの合弁会社設立を検討しているというニュースが飛び込んできた。あくまで仮定だが、アジアに店舗展開するイオンが航空業界に乗り出す可能性も考えられる。
日本の空は自由化した。航空運賃は下がり、これから利用者はぐんと増えるだろう。だが、そのとき真の主役は日本のLCCではないかもしれない。2年後、3年後、空を見上げたとき輝きを放っているのはどんな飛行機だろうか。
※すべて雑誌掲載当時