近年、競合他社も新商品を投入した結果、店頭の棚が広がった。スーパーの棚で炭酸水の扱いが増えているのを実感した人も多いはずだ。

実は2019年にも「ウィルキンソン」の躍進ぶりを取り上げたことがある。炭酸水の市場規模をその頃と比べると……。

「2021年度には約950億円となっています。この5年で約2倍に拡大しました」

以前から消費者の健康志向は高かった。全国清涼飲料連合会によると、2018年の「無糖飲料製品」の構成比は約49%。その後、炭酸水の市場は急拡大している。

「ウィルキンソン タンサン」「ウィルキンソン タンサン レモン」の「栄養成分表示」(100ml当たり)は、エネルギー、たんぱく質、脂質、糖質、炭水化物、食塩相当量がいずれも「0」となっている。

定番以外に限定商品を出すワケ

主力商品は、「ウィルキンソン タンサン」(赤ラベル)と「ウィルキンソン タンサン レモン」(青ラベル)だ。これ以外に、さまざまな派生商品を展開するが、赤ラベルの売れ行きが全体の約6割、青ラベルが同2割を占めるという。

「ウィルキンソン タンサン」(赤ラベル)と「ウィルキンソン タンサン レモン」(青ラベル)
「ウィルキンソン タンサン」(赤ラベル)と「ウィルキンソン タンサン レモン」(青ラベル)(写真提供=アサヒ飲料)

「グレープフルーツ味も人気で、定番品以外に4月26日、『ウィルキンソン タンサン クラッシュグレープフルーツ』という商品も発売しました。ウィルキンソンならではの強炭酸に、凍結粉砕果実エキスと果実のフレーバーを組み合わせた商品です。このクラッシュシリーズで、さらにユーザー拡大を図ります」

2021年も、さまざまなフレーバーを限定発売した。たとえば「ウィルキンソン タンサン ウメ」(4月)、「同ピーチ」(7月)、「マスカット」(9月)「ライム」(12月)などだ。反響はどうだったのか。

「特にピーチやマスカットは女性層に人気を呼びました。買われた方の約3割が本体(定番品)を購入されており、Z世代(一般的に1990年代半ば以降に生まれた世代)の反応がよかったのも特徴的でした」(同)

他社の取材で「限定品に興味を持っていただき、定番品に振り向いてもらうのがねらい」というマーケティング戦略を聞いたことがある。ウィルキンソンでもそれがうまくいったようだ。

コロナ禍の家飲み需要が追い風に

2020年春からのコロナ禍で外出自粛が長引き、さまざまな業界が大打撃を受けたのはご存じのとおり。飲食業もそうだったが、ウィルキンソンには追い風になった。

「外に飲みに行けないので自宅で飲む。ハイボールなどの割り材としての需要が高まったのです。自分でお酒と一緒に割って飲むほか、残った炭酸水を『直飲み』される方もおられます」

もともとウィルキンソンは業務用で、ウイスキーやカクテルなど酒の割材として利用され、ホテルのラウンジやバーなどで需要があった。師匠や先輩から道具や材料を含めて伝統を受け継ぐ、バーテンダーの世界では人気ブランドだったが、ペットボトル飲料として一般向けに発売されて以来、需要が一気に拡大した。

コアなファンに支持されるのが「ウィルキンソン ジンジャエール」だ。他の商品のような透明容器ではなく深緑の容器でパッケージには瓶のイラストの上に「プロのバーテンダーにも愛用されてきた味わいそのまま。」の文字がある。愛飲者からは「おいしいけど刺激が強烈で、むせるほど」(30代の会社員女性)という声も聞いた。