時代の転換点に必要なのは経済政策より〈哲学〉
【堤】9・11を現場で経験して何年か経った時、ふとこんなことを考えたんです。
時代の大きな転換点を迎えたとき、例えば9・11やリーマンショックや、あるいは東日本大震災とか、パンデミックもそうですね……そういう、今までの価値観がひっくり返されるような規模の変化に向き合わされたとき、人間が一番必要とするものは何だろう? と。
そして、思ったんです。経済再建や復興計画、そのための財源うんぬんという目の前の対応は別として、それはきっと、起きてしまったことを、人間の歴史という長いスパンの中で捉え、深い思考で原点に立ち戻るための〈哲学〉ではないかと。
だから私は、デジタルファシズムを阻止し、民主主義を立て直すための岐路に立つ今の日本に一番必要なのは、経済学者よりもむしろ、質の高い哲学者だと思っています。
【斎藤】資本主義の恩恵にどっぷり浸かった私より上の世代は、ある意味、惑星的危機を前にしても思考停止をしています。日本社会が危機的状況にあるからこそ、「すべてを疑う」哲学的思考が求められているのかもしれませんね。(後編に続く)
(構成=三浦愛美)