韓国、台湾に比べて労働生産性が著しく低い

日本の1人当たりGDPは、2020年時点では3万9890ドル(約452万円)と、韓国を25%、台湾を42%上回っていた。しかし、その後の数値を試算すると、2025年までに韓国は年6%増、台湾は年8.4%増であるのに対し、日本は年2%と伸びが鈍化している。

このままいけば、日本の1人当たりGDPは、2027年に韓国、2028年には台湾に抜かれるのは間違いない。

なぜ日本の1人当たりGDPは韓国や台湾ほど伸びないのか。1人当たり名目GDPは、国民全体の1年間の付加価値を総人口で割った数値のことで、労働生産性、平均労働時間、就業率で説明できる。つまり、日本は先の2国に比べ、労働生産性が著しく低いのだ。

たとえば、行政面では、韓国や台湾が行政手続きの電子化を進めているのに対し、日本はいまだに押印やサインを必要とするなどアナログ中心だ。

新型コロナウイルス対策でも、台湾ではデジタル担当大臣のオードリー・タン氏が「マスクマップ」や「ワクチン接種の予約システム」を開発するなどして迅速に対応しているのに、日本はマスクや給付金を配るのにも手間取っている。

では企業はどうかというと、韓国も台湾も新型コロナウイルスのパンデミックが起こる以前から多くの企業がテレワークを取り入れ、仕事の効率化を図っていた。一方、日本はコロナ禍でテレワークが普及したものの、緊急事態宣言が解除されると、また元に戻りつつある。

日本人の給料が上がらない理由①「労働生産性が低い」

日本の1人当たり労働生産性は、OECD(経済協力開発機構)37カ国中26位(2019年)と、G7のなかで50年以上も最下位を続けている。

日本人の給料が上がらない理由は、大きく2つある。

1つは「労働生産性の低さ」だ。とくに間接業務でDXの導入が遅れているのが、致命的だと言っていい。

しかし、すでに述べたように、仮にDXを導入して必要な人員を10分の1に減らして間接業務の生産性を高めたとしても、現行の制度ではそれによって仕事を失った10分の9の社員をリストラすることができない。ここをなんとかしないとこの先も、DXは遅々として進まないことになる。

日本の労働市場が未成熟というのも、労働生産性が上がらない要因のひとつになっている。社員を解雇する際のハードルが高い解雇規制が諸悪の根源であることはもちろんだが、それに加え、日本にはリストラされた人たちが学び直すためのリカレントやリスキリングといった学び直しの機会や場所が用意されていないのも問題だ。