反対にインドの重要性が急上昇している
社債デフォルトの増加や住宅価格の下落など不動産バブル崩壊の影響も加わり、中国経済の先行き見通しは悪化している。それに加えて、中国は台湾の近海で軍事演習を繰り返している。中国軍は米国に対して、軍事演習は台湾との関係強化に対する警告であるとの声明を出した。
世界の半導体供給の64%がTSMC(台湾積体電路製造)をはじめとする台湾企業に依存していることを考えると、今のうちに世界各国の企業は台湾有事リスクへの対応を徹底して進めなければならない。5月23日に共産党政権は減税の積み増しなど追加の景気刺激策を取りまとめたが、中国の先行き懸念は高まっている。
そうした危機感の裏返しとして中国から資本が流出し、その多くがインドに向かっている。4月にはインテルのゲルシンガーCEOがモディ首相と面会した様子をツイートした。インドの半導体産業が十分に育っていないことを考えると、長めの目線で地政学リスクの分散、サプライチェーンの安定のために脱中国・インドシフトを急ぐ企業は増えている。当面、西側諸国からインドへの資金流入は増加する可能性が高い。世界経済におけるインドの重要性は急上昇し始めた。
工業化が遅れているインドのいびつな経済構造
先進国からの直接投資の増加はインド経済の、より持続的な発展に不可欠だ。第1、2、3次産業別にGDPの構成比を見ると、インドの経済構造はいびつだ。政策の観点から考えると、モディ政権がどのようにして軽工業をはじめ第2次産業の育成のために直接投資を誘致するかが経済政策の注目点になるだろう。
米中央情報局(CIA)が公表している“ワールドファクトブック”によるとインドのGDPに占める第1次産業(農林水産業)は15.4%、第2次産業(製造業、建設業など)は23%、第3次産業(IT通信などのサービス業ほか)は61.5%だ(2016年)。
これがインドネシアでは第1から3次産業の順番に13.7%、41%、45.4%(2017年)、中国では7.9%、40.5%、51.6%(2017年)、マレーシアでは8.8%、37.6%、53.6%(2017年)である。傾向として多くの新興国では第1次産業から第2次産業に生産要素が再配分されて経済が発展し、その上で第3次産業が成長する。これは経済発展の理論と整合的だ。