中国からの資金流出が増え始めている

共産党政権によるやや強引なゼロコロナ政策によって、中国の経済活動が低下している。国家統計局が発表した、4月の購買担当者景況感指数(PMI)の大幅な悪化が示す通りだ。習近平政権のゼロコロナ政策に潜むリスクは小さくはない。不動産市況の悪化やIT先端企業への締め付けなど、これまでに顕在化した負の影響は深刻化している。

北京冬季五輪・パラ総括表彰大会で演説を行う習近平氏
写真=EPA/時事通信フォト
北京冬季五輪・パラ総括表彰大会で演説を行う習近平国家主席

それに加えて、今回のゼロコロナ政策が、人々の動線を押さえ込んでしまった。経済活動の低下などに伴い、中国からの資金流出が増え始めた。現在、共産党政権は必死になって資金流出を食い止めているとみられる。今後、人民元の下落懸念の高まりによって、中国経済の厳しさは増すだろう。

秋の党大会で3期続投を目指す習近平国家主席は、ゼロコロナ政策を続けて感染の再拡大を食い止めようとするだろう。経済活動は阻害され、個人消費はさらに減少するだろう。不動産市況の悪化に拍車がかかり、地方政府の財政状態も悪化する恐れが増している。

共産党政権の規制強化から逃れるために、中国から海外に事業拠点を移す企業も増えるはずだ。その結果、中国では雇用・所得環境が不安定化して失業率が上昇する可能性が高い。ゼロコロナ政策によって中国経済の成長率の低下傾向はこれまで以上に鮮明となるだろう。

国家資本主義体制は大きな試練を迎えつつある

4月、これまでに増して中国経済の景況感の悪化が浮き彫りになった。特に、国家統計局が発表する製造業と非製造業のPMIの落ち込み方は急激だ。製造業PMIは47.4と前月から2.1ポイント下落した。非製造業は41.9と前月から6.5ポイント下落した。いずれも事前予想を下回った。共産党政権は公共事業の積み増しによって景気の浮揚を目指していたが、今のところ減速を食い止めるには至っていない。

事業規模が小さい企業を対象とした財新とマークイットが発表するPMIと異なり、国家統計局が発表するPMIは習政権が事業運営体制を強化してきた国有、国営企業をはじめ大企業が主な調査対象である。4月の国家統計局版PMIの下落は、中国の国家資本主義体制が大きな試練の局面を迎えつつあることを示唆する。