不動産バブル、株価下落…ゼロコロナ政策のツケ

中国経済はかなり厳しい状況にある。その最大の要因は、ゼロコロナ政策だ。上海や北京などの大都市でロックダウンが実施されて動線が寸断された。それによって、個人消費には大きな下押し圧力がかかった。国内の観光需要にも大きな打撃が出た。

ゼロコロナ政策による景況感の悪化によって、不動産バブル崩壊の負の影響も一段と強まった。3月の70都市の平均住宅価格は前月から横ばいだった。報道では、4月1~12日の間、30都市の新築住宅販売件数は前年比で55.6%減少したようだ。

また、ゼロコロナ政策による食料の不足など人々の不満が広がることを阻止するために、共産党政権はSNSプラットフォーマーなどIT先端企業への締め付けも強めざるを得ない。それによって成長期待の高い企業のアニマルスピリットは弱まる。その懸念から中国の株価は下落基調だ。

このように、ゼロコロナ政策を端緒に不動産市況の悪化、IT先端企業への規制強化など負の要因が連鎖反応的に強まっている。それにウクライナ危機などによって世界の供給制約が深刻化したことも加わり、中国経済の減速はこれまでに増して鮮明だ。

主要投資家の間で強まる「脱中国」の動き

ゼロコロナ政策によって、中国からの資金流出も増加し始めた。足許、人民元の下落が顕著だ。年初から4月半ばまで人民元は米ドルに対して横ばい圏で推移してきた。しかし、4月下旬に差し掛かるあたりから急速に人民元安が進んでいる。ゼロコロナ政策の長期化を懸念し、個人消費や設備投資、港湾施設の稼働率低下による輸出の減少などによって中国経済の成長率が低下傾向を脱することは難しいと考える海外の主要投資家が増えた。

彼らは中国本土の株などを売り、受け取った人民元を売って米ドルなどを手に入れる。人民元売りは国内の投資家の不安心理を掻き立て、命の次に大切なお金を守るために人民元を米ドルなどに替えようとする人が増えている可能性は軽視できない。それに加えて、米欧と中国の金融政策の相違も大きくなっている。人民元の売り圧力は強まりやすい状況が続きそうだ。