これまで以上に相場管理に躍起になっている
その状況下、共産党政権と中国人民銀行(中央銀行)は、資金流出を必死になって食い止めようとしているとみられる。それは、3月まで3カ月続けて外貨準備残高が減少したことが示唆する。
ドル高による資産価額の目減りなどに加えて、中国人民銀行は自国通貨の下落が勢いづかないように人民元を買い支えするなど相場の管理にこれまで以上に神経を尖らせているだろう。それに加えて、共産党政権は中央銀行デジタル通貨(CBDC)である“デジタル人民元”の利用を急いでいる。人民元取引の監視体制は強化されている。
ゼロコロナ政策によって4~6月期の中国のGDP成長率は1~3月期を下回る可能性が高い。7~9月期以降の成長率に関しても楽観できない。景気の先行き懸念が高まる中、中国からの資金流出は増加基調で推移するだろう。そうした展開が現実のものとなった場合、共産党政権はなりふり構わぬ姿勢で資金の流出を食い止めなければならなくなるはずだ。
その取り組みの一環として綱紀粛正が徹底され、これまでにも見られたように有名俳優や民間企業の創業経営者など富裕層への締め付けが強化される展開が予想される。
失業率が上がれば3期続投に黄色信号も
また、ゼロコロナ政策によって中国の失業率は上昇するだろう。大企業の景況感が悪化する状況下、中国の銀行は中小企業への融資に慎重にならざるを得ない。世界的な供給制約の深刻化によって企業の事業運営コストは増える。生き残りをかけて雇用を減らす企業は増えるだろう。
今のところ、習氏の3期続投が危ぶまれる状況には至っていないようだが、ゼロコロナ政策が続くことによって、中国の実体経済はより強く下押しされる。個人消費の減少、不動産市況の悪化、IT先端企業への締め付け強化による株価下落などが鮮明となれば、これまで以上に企業経営者のマインドは悪化し、失業者が増える恐れがある。
その場合、党内からの批判が強まるなど習氏の阻害要因は増えるだろう。秋の党大会で3期続投を目指す習氏にとって、失業率の上昇はなんとしても避けなければならない。共産党政権は政策を総動員して雇用を創出し、経済成長率を押し上げようとするはずだ。金融緩和、減税やインフラ投資の積み増し、不動産規制の緩和など、実施されてきた経済対策は強化されるだろう。