「非正規を増やして柔軟性を高める」方法は間違い
——教授は第1回で、男性が大半を占める正社員と女性が大勢を占める非正規労働者という、日本型雇用制度の差別的な「2層構造」を批判しています。
そして、著書の中で、「第1次安倍内閣(2006~07年)はパートタイム労働法を改正し、正社員と非正規労働者の処遇に均衡を確保する方針を打ち立てたが、日本独特の『合法的な』差別的待遇を行う余地は残した」と、書いています。
改正は、「職務内容」と、残業や配属変更などの「拘束性」の点で正社員と非正規労働者を平等に扱うことにより、同等な処遇の実現を図るものだったため、たとえ業務は似ていても、実質的に正社員と「平等」だとみなされる非正規労働者は「ほぼ存在しない」と。
その結果、「同等な賃金や福利厚生の受給権利は生じない」と、教授は分析しています。女性をはじめ、生活が困窮する非正規労働者が多いことについて、どう思いますか。
もっと非正規労働者を増やして日本の労働市場に柔軟性をもたらすべきだと言う人は多いかもしれませんが、私はそう思いません。日本が生産性を上げる道は、正社員の割合を増やすことだと思います。つまり、日本企業は、今やっていることと逆の方向に方針転換すべきです。
次に、正社員と非正規労働者という2層構造でなく、もっと多くの雇用形態を設けるべきです。ただ、これは、場合によっては非常に危険なことでもあります。正社員と非正規労働者の間を取って正社員の地位を下げればいい、と主張する人が出てくるからです。
しかし、それは間違っています。正社員の地位を下げるのではなく、非正規労働者の地位を高めるような、2層構造を超えた雇用形態を構築すべきです。
正社員の地位を下げずに非正規社員の地位を押し上げることが必要
例えば、転勤や労働時間の変更が難しい女性の非正規労働者と新たな雇用契約を結び、企業側が勤務地の異動や労働時間の変更を課さない代わりに、(正社員と類似の職務内容で)非正規労働者より賃金が高く、正社員よりは低いカテゴリーを設けるのも一手です。
ただし、目的は、あくまでも非正規労働者の地位を押し上げることです。正社員の格下げを招くようなものであってはなりません。