マーケッターの眼

外資ホテルの開業が相次ぐも、全国的な知名度では老舗ホテルが上。シティホテルでもコストパフォーマンスが重視される。

ホテル(シティホテル)部門では、帝国ホテル、ホテルオークラと、国内のホテルが上位に評価された。一時期、高級外資ホテルの東京開業が相次いだが、全国的な知名度なら国内高級ホテルのほうが上。今回の調査は高級ホテルを滅多に利用しない人の評価も反映されているため、知名度がそのままランキングに結びついた。

では、実際に利用しているユーザーは何を重視して評価するのだろうか。一般的にシティホテルの顧客満足度には、客室、飲料、サービスの品質が強く影響すると考えられている。シティホテルの主なターゲットは、財布の中身を気にしなくてもいい富裕層をはじめとした、相対的に価格感度が低い人々や用途だからだ。しかし、日本版CSI(顧客満足度指数)のデータでそれを検証したところ、意外なことに品質よりも価値(費用対効果)のほうが顧客満足度に強く影響していることがわかった。

この傾向は、もともとコストパフォーマンスが重視されるビジネスホテルの場合ときわめて似ている。今回は別部門として調査しているが、顧客満足度に限れば、シティホテルとビジネスホテルは同じ土俵で評価していいのかもしれない。実際、日本版CSIでは、シティホテルより高く評価されたビジネスホテルもあった。

ビジネスホテル業界の歴史を簡単に振り返ってみたい。かつてのビジネスホテルは、低料金とはいえホテルであることには変わりなく、シティホテルのミニチュア版という位置づけだった。ワシントンホテルやホテルルートイン、三井ガーデンホテルズといったホテルは、このグループに属する。

時代が進んで低価格へのニーズが強まると、サービスを極限まで削ぎ落としたバジェットホテルが台頭した。その代表が、東横インやアパホテルだ。とくに東横インが起こした価格破壊のインパクトは強烈で、それが今回の調査でも同社を1位に押し上げたと考えられる。

私の注目ブランド→スーパーホテル

続く第三世代の代表格がスーパーホテルだ。最大の特徴は、不要なサービスを削ぎ落としつつ、同時に新しい価値を創出する点にある。たとえば同ホテルでは、自分好みの枕を選べたり、音や照明などの細部にわたって、心地よく眠れる環境をつくるなど、“眠り”に特化してサービスを展開。単に安いだけで強いブランドは構築できない。これからは同時に付加価値をつくり出す戦略が必要だ。

※すべて雑誌掲載当時

(坂本道浩、宇佐見利明=撮影 ライヴ・アート=図版作成 <マーケッターの眼>小野譲司/村上敬=構成)