先人の教えから発展的な学びを得よ
では、拡張的学びというのは何なのでしょうか。ひと言でいうと、心を豊かにするための勉強です。以前ある経営者の方が、人間は体と心からできているのに、みんな体のことばかりに一所懸命気を使って、心のほうに栄養を与えることを忘れていると話しているのを聞いたことがあります。
そして、もうひとつの発展的学びとは、命を学ぶということにほかなりません。地球上に生命が誕生して以来、脈々と続いている遺伝子の営みの一部を担っているのが、私たちの生命なのですから、自分たちの幸せだけを追求するというわけにはいかない。次の世代にこの命をどうやってつないでいくかを考えざるをえないのです。
そういう心や命のあり方を学ぶには、さまざまな経験を積んできた人の話を、直接聞くのに勝るものはありません。それから、優れた書物からも学べるところは大いにあります。最近も、井上靖さんの『孔子』や、安岡正篤さんの言葉などから、心や命に関する非常に多くの気づきを得ることができました。
私は、読み終えたらいったん本を閉じ、そこに何が書いてあったかを頭のなかで思い出して、それらが自分の生活や人生にどのように反映させられるかを考えるようにしています。読んでいるときはいい話だと思ったのに、うまく考えられないものは、自分にとっていまは価値がないということですから、忘れてしまってもいいのです。自分にとって必要な言葉であれば、成長したときにまた出合えるはずです。
※すべて雑誌掲載当時
(山口雅之=構成 芳地博之=撮影)