仕事がデキる人は上司に求めない

そもそも仕事ができる人の多くは、上司に期待しません。上司と自分、それぞれの職分を見極め、しっかりと線を引いて期待しないスタンスで接しているからこそ、自分のペースで安定したパフォーマンスを発揮できるのです。

そして、期待していないからこそ、その上司がしてくれることや助けになることに対しては素直に「ありがたい」という感謝が芽生えやすくなります。

また、有能な上司に当たれば自分も有能になれるわけではありません。仕事ができて頼りがいがある上司のもとでは、人は「何かトラブルがあっても上司がなんとかしてくれるはずだ」という甘えが生じます。

甘えもまた、形を変えた期待です。その状態が続いたままでは、いくら年数を重ねても仕事の責任感は身につかないでしょう。

上司の性質や相性とは関係なく、「上司に認められたいが、認められない」と悩んでいる人もいるかもしれません。その場合は、「認められたい」という自分の中にある期待をまず捨てることから始めましょう。

「認められたい」「優秀だと思われたい」という発想はスパッと手放して、自身のコンディションを整え、淡々と仕事をすることに意識を切り替えます。

そうすることで、「この分野で認められないなら、他の分野で頑張ってみよう」と意識が外に向き、視界が開けていきます。

「認めてほしい」という執着を手放し、平常心を徐々に取り戻すことができれば、パフォーマンスも必ず高まっていきます。

「認められたいのに認めてもらえない」と悩んでいるときに気をつけたいのは、「この上司に認められないから自分はダメな人間だ」という発想に陥ることです。

他者からの評価は曖昧あいまいなものであり、今の上司が評価しているのはあなたという人間のごく一部分にすぎません。評価対象になっているその一部ですらも、上司や部署、仕事内容が変われば、たやすく変わります。

たまたま巡り合っただけの人や案件の判断だけで、自分の価値を決めつけるべきではありません。

部下への期待値は常に低めに設定

では、上司、リーダー、マネージャーと呼ばれる人たちが、部下や後輩と付き合う場合においてはどうでしょう。

上司を選べないのと同様に、部下も選ぶことはできません。だからこそ、部下との付き合いで大切なのは、やはり「期待しない」をベースに接することです。

「うちのチームは使えない部下ばかりで、いつまで経っても仕事が任せられない」となげいているのならば、まず部下への期待値を下げることから始めましょう。部下を「使えない」「能力が低い」と勝手に判断してしまうのは、あなたの中の部下への期待値が高すぎるからです。

自分の新人時代を思い出してみてください。上司から「○○さん、ちょっと」と名前を呼ばれただけで「何かミスでもあったのでは?」とドキドキしませんでしたか。

上司と部下のパワーバランスは対等ではありません。上司は普通に部下に話しかけているつもりでも、ほとんどの部下は常にうっすらとした緊張感を持って上司と向きあっています。

だからこそ、上の立場の人間は、相手に余計なストレスを与えない「言い方」を日頃から意識することが大切です。

メガホンで従業員をどなる上司
写真=iStock.com/avid_creative
※写真はイメージです