毎日朝6時に出社し、夜中3時に会社を出る

朝型の先輩は昔ながらの職人かたぎの方でしたので、決して悪気はなく、当然のように朝方の出社を勧められました。人格者でしたし、私のためを思って言っていただいていることがわかっていたので、断り切れませんでした。

夜型の先輩は仕事が大好きな方で、面倒見が良いところはあるのですが、かなりネチネチした人でした。仕事で困った時に聞く相手がいないので断り切れませんでした。

店長はお酒が好きで、頭の回転が速く、気が短い方でした。しかし、男気があり、サッパリした性格で成績優秀でしたので、魅力的な方でした。厳しい方でしたが、お客さまとの商談に同席してくださる優しい面もある方でした。そしてお酒のお誘いを断ると本気でスネるので断り切れませんでした。

ということで毎日朝6時から出社し、夜19時にお酒に付き合い、その後、22時に会社に戻り、夜中3時に会社を出るというルーティンを半年続けました。

案の定、居眠り運転で事故を起こしました。その後は命を守るため、朝は普通の時間に出社し、残業を断り、時々お酒に付き合うという形に変えました。

しんどい毎日でしたが、同期よりもはるかに成長速度が上がりました。ちなみに、その営業所は全国一位の契約数でした。しかし退職者が後を絶たない営業所でした。

原因は先ほどの3人です。あまりに過酷な環境でしたので、私はその3人のことを「魔のトライアングル」と呼んでいました。もう戻りたくはありませんが、今となっては良い思い出です。

15年近く前の話ですので、今はここまで過酷な環境ではないと思いますが、長時間労働は住宅営業の中では普通のことでした。

大切なのは「仕事にやりがいと目標を持つこと」「心が折れないようにすること」です。

私は夜型のネチネチ男には負けないことを目標にしていました。(ネチ男さんとは今でも仲良くしています)「こんなネチネチしたおっさんには絶対負けない」と誓っていました。

何でも良いので「心を燃やす」ことが成長する秘訣ひけつだと感じます。

休みの日でも一日中電話が鳴りやまない

毎日ではありませんが、明け方まで仕事が終わらないことや、休みの日も出勤せざるを得ないことはめずらしくありませんでした。

私は住宅営業の仕事が好きでしたので、そこまで苦痛ではありませんでしたが、家族を犠牲にしていました。

イチ営業マンであれば契約数を意識して制限すれば、ある程度の時間に帰宅できるのですが、店長になるとそうはいきません。

私が勤めていた会社は経営不振でしたので、お店を黒字にしないと店舗閉鎖になる危険性もありました。従業員の雇用を守るためでもありましたし、自分の限界に挑戦したい気持ちもありましたので、毎日夜遅くまで残業していました。

契約がたくさん取れて、お客さまが多くなると休みの日も電話が一日中鳴ります。お客さま、協力業者さま、上司、部下から電話が止まりませんでした。

つらそうな表情で携帯電話で対応するビジネスマン
写真=iStock.com/NicolasMcComber
※写真はイメージです

かと言って売れない営業マンは、周りからばかにされた扱いを受けます。50代のベテラン社員でも、売れなくなれば軽く扱われるようになります。

売れすぎると家にいる時間が短くなり、売れないと会社にいる時間が苦痛です。

長男に言われた一言で目が覚めた

私は仕事が好きでしたので、忙しくても苦痛ではなかったのですが、妻と子供を犠牲にしたことを痛感する出来事がありました。

長男が小学校の作文で「親の仕事について」書く宿題があったのですが、なんと長男は妻のパートのことを作文に書いて発表したそうです。

長男に理由を聞いたところ、「だってお父さんはいつも家にいないじゃん」と言われてハッとしました。

お客さまにとっては一生に一度の家ですが、自分の人生も一度です。

年間契約数の目安を自分の中で考えるべきだと思いました。目安はお客さまと自分の家族を両方大事にできるボーダーラインの棟数です。

個人の能力差や住宅会社によって業務の範囲が異なりますので、適正な契約件数は一概には言えませんが、まず自分の家族を大切にすることを見失わないようにするべきだったと、長男に言われたその時に初めて気がつきました。