大前 私は日本全体の仕組みを変えることはあとでいいと思うんです。先ほど述べた鄧小平の一国二制度ではないですが、まずは先にやれるところからおやりなさい、と。それがうまくいけば、「自分たちもやらせろ」と一気に全国的に運動が盛り上がってくる。とにかく先行事例をつくらないと何も始まらない。
私が95年に都知事選に出馬したときは、平松(守彦・前大分県知事)さんや梶原(拓・前岐阜県知事)さんと連携して「新・薩長連合」という構想を文藝春秋で発表して名乗りを上げたんです。明治維新のときと同じようにいくつかの自治体が連合して国を変えようとしたんです。でも私自身が落選してしまい、平松さんに「おまえ、何やってんだ」と言われたのですが(笑)。
橋下 いきなり国の制度を変えるのはどだい無理な話です。一地域の改革がどれだけ全体に広がっていくかにかかっています。そのためには一国二制度、いわゆる特区を国に認めてもらわなければなりません。ここにどう風穴を開けるかなのです。
大前 今回の「都構想」の件は永田町の国会議員が「参った」と思っているでしょう。
橋下 いやいや、そんなことないですよ。
大前 クジャクの羽じゃないけど、ある程度大きく見せたうえで政治的な動きを加速度的に統合していくことが重要です。鬨(とき)の声も、一人で上げるよりも、いろんな人が上げたほうがいい。
政治家は次の衆議院選挙に怯えていますから、彼らに協力させて一国二制度に持っていく。この戦いの本当の相手は政治家ではない。役人です。もともと「政治主導」と言い出したのは民主党政権なのだから、その事例を一つくらい見せろ、と。民主党は綱領で道州制を謳っているし、基礎自治体の構想もマニフェストに入っているんですから。