悪用した犯人を特定しにくく、検挙には高いハードル

本来は紛失防止タグだが、以前から子どもの見守りなどにも使われている。居場所が正確にわかる専用の見守り端末は多数あるものの、たとえば「みてねみまもりGPS」や「GPS BoT」などはそれぞれ端末代5280円の他に月額料金528円がかかる。それ故、何かと物入りの子育て世代の中には、3800円の端末代だけで済むAirTagを利用する家庭があるのだ。

見守り端末は充電の必要があるが、AirTagなら電池が約1年持続するため鞄に入れっぱなしでもいいという楽さもあるようだ。

この便利な機能を、他人の持ち物や乗り物に仕込んでストーカーや盗難に悪用するケースも出てきている。対象者の自宅や居場所を確認したり、目をつけた高級車のナンバープレートやバンパーの裏などにつけてひと目のない時に盗んだりという被害が続いている。たとえば、カナダの地方警察は2021年9月以降、AirTagが使われたとみられる高級車の盗難事件が相次いでいると注意を呼び掛けている。

日本でもAirTagを使ったストーカー被害の相談などが警察に届けられているが、ストーカー規制法は現時点では「GPS機器等」を対象としており、Bluetoothを用いるAirTagが規制対象となるかはグレーゾーンだ。その上、持ち主の特定や意図の特定が難しく、検挙が困難な状態だという。

アップルの防止策は5つの手動操作が必要

Appleはこうした悪用への対策として、自分のものではないAirTagと30分以上一緒に移動すると、iPhoneに「あなたが所持中のAirTagが見つかりました このAirTagの所在地は所有者が見ることができます」と表示させる変更を加えている。

この通知を受け取るには、①「位置情報サービス」と②「Bluetooth」をオンにした上で、③「設定」→「システムサービス」→「iPhoneを探す」をオンにする。ここで、自宅など特定の場所に着いたときに通知してもらうには④「システムサービス」→「利用頻度の高い場所」もオンに。続いて⑤「探す」Appを開き、「自分」タブをタップしてトラッキング通知を有効にする必要がある。

一定時間後にはAirTagが音を出して存在を知らせる仕組みもある。以前は3日間で音が鳴る仕組みだったが、8時間から24時間の間のランダムな時間に変更になっている。

不審なAirTagの存在に気づいた場合、通知をタップするとAirTagに関する情報(シリアル番号、登録者の電話番号の下4桁など)が表示される。スクリーンショットなどで保存してから警察に届けよう。Appleの公式サイトでも詳しい手順を紹介している。

電池を抜き取れば音を停止させることも可能だが、自宅付近で抜き取ると最終発信地点に自宅があると伝えてしまうことになる。自宅から離れた場所に移動してから抜くと安心かもしれない。