2021年9月には、元交際相手の40代女性の車にGPS発信機をつけて位置情報を把握したとして48歳男が書類送検された。男は約90回位置情報を確認し、女性に対して「行動を把握している」とメッセージを送りつけていた。女性が車を調べると、車の下に発信機が仕掛けられているのを発見、通報に至ったのだ。
男は動機について「女性の行動を知りたかった」と語っているが、自らメッセージを送っていなければ位置情報を把握していることはわからないままだったかもしれない。
女性のバッグにいつの間にか入っていたAirTag
GPSを悪用したストーカーが摘発される中、新たに問題となっているのが、AppleのAirTagだ。米国在住の20代女性は不可解な出来事があったと話す。
「自宅に帰る途中、iPhoneに『AirTagが見つかりました』と表示が出てパニックになった。慌ててあちこち探したら、バッグの中に知らないAirTagが入っていた。レストランで椅子にかけていたときか、通勤電車で入れられたのかもしれない。覚えがなくて怖い」
無断で入れられていた意図は明らかではないが、おそらくAirTagを悪用したストーカー被害と考えられるだろう。
女性は警察に届けたが、iPhoneの通知のみでは十分に証拠にならず、誰かが自宅に訪れないとストーカーとは証明できないのではないかと言われてしまったという。警察に届けても、このように満足な対応をしてもらえない例は少なくないそうだ。
500円玉サイズのタグで現在位置が特定できる
AirTagとは、紛失・盗難防止のために鍵や財布、自転車などにつける紛失防止タグのことだ。500円玉より一回り大きいサイズ(直径約3センチ、厚さ8ミリ)で、Appleが2021年4月に発売した。
AirTag自体にはGPSは搭載されておらず、Bluetooth通信でiPhoneと通信し、「探す」アプリで位置情報がわかる仕組みだ。自分のiPhoneだけでなく、周囲にある他人のiPhoneを介して情報が渡される。
位置情報については、「あのビルにいる」程度までわかるくらいの精度。多少ズレはあり、更新頻度はリアルタイムではなく数分間のラグはあるものの、自宅などその場にとどまる時間が長くなれば特定は容易だろう。