「マクサー・テクノロジーズ」の一人勝ち状態

かつては地上の3~5メートルの物体を識別できるレベルの画像が軍事機密になっていたが、今では商用でも数十センチの物体を識別できる。ひと昔前なら軍事機密レベルのものが、商用画像として世界の人々の目に触れる。米国家地理空間情報局は、少なくとも200の商業衛星の衛星画像を使用しているとしており、膨大な数の衛星画像が毎日生まれている。

自社の保有する衛星で地表を撮影し、その画像を販売している会社は多数あるが、今回、圧倒的な強さを見せているのが、米マクサー・テクノロジーズ社(本社・米コロラド州)だ。地上30センチの物体を識別できるといい、商用としては最高レベルの画像を誇る。メディアの話題をさらっている衛星画像のほとんどは同社のもので、一人勝ち状態になっている。

宇宙から見た地球
写真=iStock.com/isil terzioglu
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同社は、「通信、地図作成から防衛や諜報ちょうほうまで、世界中の数十の業界にサービスを提供している」「米政府の不可欠なミッションパートナー」などと自社の業務を説明している。

1992年にデジタルグローブ社として発足し、合併などを経て、2017年に現在の社名に落ち着いた。ダニエル・ジャブロンスキーCEOは、宇宙関連シンポジウムで、ロシアの軍事侵攻後、米政府機関からの衛星画像の需要が倍以上に増えたことや、報道機関からも1日に約200件の需要がある、と語った。

米国の“援護射撃”にプーチン氏は苛立っている

今回、米国は衛星画像が拡散することを望んでいるようだ。

ステイシー・ディクソン米国家情報長官代理は4月、「米政府は商業画像を細かく管理していない」「世界で起きていることをもっと共有したい」と発言した。ウクライナへの支援、民間企業振興に加え、21世紀の新しい「武器」という意識があるのだろう。

かつては軍事機密レベルだった詳細な衛星画像が公開され、宇宙から丸見えになるリスクを伴う時代に行われたウクライナへの軍事侵攻。そのもたらしたものに、プーチン大統領は苛立っていることだろう。

当然ながらウクライナ側の動きも衛星で見られている。4月上旬にポーランドが保有する旧ソ連製戦車などが、ウクライナに向けて車両で運ばれる様子を撮影したとされる映像がSNSで出回った。