ウクライナを小国家に分割して、少しずつ併合していく

プーチン大統領は5年後、10年後の世界をどう変えていこうと考えているのでしょうか。

プーチン大統領に見えている世界地図の中のロシアは、ソ連の崩壊という歴史的悲劇によって不当に縮小させられた版図です。プーチン大統領にとってのロシアは、「ロシア帝国(1721~1917年)の地図」です。

ロシア帝国は現在のロシアをはじめ、フィンランド、ベラルーシ、ウクライナ、ジョージア、モルドバ、ポーランドの一部や、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンの中央アジア、リトアニア、ラトビア、エストニアのバルト3国、外満州などユーラシア大陸の北部を広く支配していた大帝国です。

ウクライナにはまず親ロシア的な新政権を立て、非軍事化させて欧州とのバッファー(緩衝)とし、時間をかけながら小国家に分割させて、少しずつ併合していく狙いでしょう。

しかしロシア軍の振る舞いは相当にひどくむごいので、現時点で兄弟民族のウクライナ人全体を敵に回しました。高まった反ロシア感情を鎮めるにはかなり時間がかかります。ロシアもそのことをよくわかっているので、ウクライナ人から内発的にロシアとの協力を望む政治エリートが出現するのを時間をかけて待つと思います。

ウクライナの次に狙われる国の名前

プーチン大統領がその先に見据えているのは、南の国境です。欧米に接近を続けるジョージアには、ロシア軍の介入によって2008年に独立を宣言した「南オセチア共和国」があります。国連加盟国の中ではロシア、ニカラグア、ベネズエラ、ナウル、シリアの5カ国だけしか承認していない国家です。

その南オセチア共和国のビビロフ大統領は3月末、「歴史故郷であるロシアと再統一する国民投票を近く行う」と表明しました。実施されれば圧倒的多数の賛成を得ることは確実で、ジョージアは反発して軍事介入する可能性があります。ジョージアが武力で阻止しようとしても、力でそれをはね返し、「南オセチア共和国」を併合するつもりでしょう。

もうひとつ注目されるのが、ロシアの飛び地の領土であるカリーニングラードです。ここはリトアニアとポーランドに囲まれていますが、NATO加盟国であるリトアニアが国境を封鎖しようとしています。これは協定違反であり、ロシアにとって見過せません。軍事力で阻止しようとすれば、今度こそNATOがロシアとの直接戦の危機に直面します。

プーチン大統領は長期戦略に基づいて、戦火をさらに拡大させるかもしれません。

(構成=石井謙一郎)
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