2倍以上の価格差でも固定資産税の評価額は10数%

高層階には以前、さらに有利な点がありました。固定資産税の評価額は、同じマンションでは1つの価格しかつかないことになっていたのです。高層階の部屋と低層階の部屋では価格はまったく違いますが、広さが同じであれば、固定資産税は同じになります。

高層階の値段が高い物件を買えば低層階と同じ評価額しかされないので、その差額ぶん節税することができたのです。

当局もこの不公平さに気づき、2017年度には、固定資産税の評価額が改正されます。20階以上のマンションの高層階に対しては、階を上がるごとに高くなるように設定されたのです。1階と最上階の税率の差は、最大で10数%程度にもなりました。

しかし、この改正は、かえって「タワーマンション節税」を有利にした可能性があります。

というのも、不動産市場において、高層階と低層階の価格の違いは10数%では済みません。マンションによっては、2倍以上の価格差が生じる場合もあります。

にもかかわらず、固定資産税の評価額では10数%しか差がありません。新しい固定資産税を適用されたとしても、節税策としてはまだ十分にメリットはあるのです。

また、この新しい課税方法が適用されるのは、2017年4月以降に販売されるマンションです。それ以前に販売されたものについては、従来の固定資産税が適用されることになります。

ということは、中古のタワーマンションを購入することの節税効果は、以前とまったく遜色ないのです。

バルコニーでマグカップを持っている女性
写真=iStock.com/recep-bg
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追加課税でもタワマン節税の人気は衰えない

しかも、しかも、です。固定資産税の額は、相続税とも連動しています。相続税の資産評価額は、本来は時価が基本になりますが、不動産などの場合は固定資産税の額で申告していいという特例があるのです。

タワーマンションの高層階の土地代についても、時価よりもかなり低い額で相続税申告できることになります。

ただし、この節税方法には落とし穴があります。相続税の評価額を固定資産税の評価額で申告していいというのは、便宜上そう決められているだけで、原則としては時価で換算することになっています。

固定資産税を基準にして申告しても、あまりに時価と差があれば、税務署に修正される恐れがあるのです。

また、税務当局もタワーマンション節税を快く思っておらず、明らかな節税目的の購入に対しては、追徴課税がされたこともあります。

とはいえ、相続税との連動を差し引いても、タワーマンションの高層階が節税になることは変わりません。人気はしばらく衰えそうにないでしょう。

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