普段使っていないモードは、「アウェー」の状況でこそ立ち上がる。慣れ親しんだ「ホーム」の状況では、脳の活動パターンがマンネリ化してしまう。どうしたらよいかすぐにはわからないような、そんな状況に置かれてこそ、私たちの脳はフル回転する。

5歳の子がファストフード店に一人で買いにきたら、何と声をかける?(PIXTA=写真)

一度、微笑ましい光景を目にしたことがある。ファストフードの店で、5歳くらいの女の子が一人でカウンター前に立っていた。子どもだけで買いにくるのは珍しい。店員さんは、いつものようにマニュアル言葉で済ますわけにはいかない。

その女性のスタッフは、女の子に向かって視線を落として、にっこりと笑い、ゆっくりと、話しかけるような言葉で、「ごいっしょに、ポテトは、よかったのかな?」などと言っていた。子どもが一人で買いにくるという滅多にない「アウェー」な状況で、いつもと違うモードに脳がなっていたのであろう。

ふだんとは違う取引先に行く。外国を訪問して、慣れない言葉でビジネスの交渉をする。初対面の人と、気を使う会食の場。自分の経験値があまりない分野での商品開発。そんな「アウェー」な状況でこそ、脳の潜在能力が活きるのだと思えば、むしろ積極的に飛び込みたくなる。

人生の構造問題とは、年を重ねるにつれて、次第に「ホーム」の領域が増えていくことである。淡々と業務をこなす日常も大切だが、胸がどきどきする「アウェー」があってこそ、脳の潜在能力は引き出される。

脳の細胞は目一杯働いている。ただ、使っていないモードはまだまだ眠っている。積極的に、「アウェー」の状況に挑戦してみてはどうか。

(写真=PIXTA)