100万円の損失で悟った新興国通貨投資の3つの教訓

こうして私は、はじめてのリラ投資で100万円以上も失ったわけですが、身をもって、新興国通貨投資における3つの教訓を得ることができました。

①「値ごろ感」で投資しない

私はリラを40~50円程度のタイミングで買ったわけですが、実はこのとき、「すごく安く買えた!」と内心ほくそ笑んでいました。というのは、過去の相場を調べてみると、2007年頃にはなんと1リラ=100円近い水準だったからです。実際、「数年前の半額バーゲンセールですよ」と煽る業者もいました。

ただ、通貨の価値は、(かつての金本位制と違って)明確な資産に裏付けされたものではなく、その国の情勢に応じて、「市場が判断」します。ですから、情勢が目まぐるしく変化する新興国通貨を過去の相場と比べ、“値ごろ感”で取引すると痛い目に遭うわけです。

②高金利に吊られない

基本的に、新興国の金利は高いです。ただ、金利が高いということは、一般には、その国はインフレ状態ということです。金融政策のセオリーとして、インフレ状態(景気過熱)には金利を引き上げるからです。

インフレ状態とは、継続的に物価が上昇している状態のことで、相対的に通貨価値が下落していくことを意味します。すなわち、長期的に見れば、高金利の国の通貨価値は、下落していく可能性が高いことになります。

南アフリカランドやブラジルレアルなども高金利通貨として有名ですが、長期的視点で見れば、これら通貨も綺麗な下降トレンドを描いています。

③新興国では、何が起こるか分からない

新興国の政治・経済は非常に不安定で、日本では考えられないようなことも普通に起こり得ます。たとえば、トルコでの2016年の大統領暗殺未遂クーデターなどは、まさにそれです。

そのクーデター容疑がかけられたアメリカ人牧師の拘束をきっかけに、アメリカから強烈な経済制裁が行われ、前述の2018年トルコショック(リラ大暴落)となったわけです。

リラ投資においては、それなりに政治的リスクも認識していたつもりでしたが、一般的な日本人である私にとって、独裁政権の世の中はイメージできず、そしてクーデターまでは想定できず、そのリスク認識は全然十分ではなかったようでした。