荒れる学校、不登校、いじめ…さまざまな問題が噴出
そして宮原氏は「こうした遊びを日本の子どもがしなくなったときと、中学校が荒れ、子どもにいじめ、不登校等の問題が大きく起こってきたときがきっちり重なります」「なぜ子どもたちは問題行動をおこすのか、その原因の一端はこの遊びと生活の変化の中にあるのではないですか」
そう感じて宮原氏は、この60年代末から70年代初めの頃の子どもたちの遊びと生活の写真を出版したという。題して『もう一つの学校』(新評論)である。
深刻な運動能力の衰え
遊びが失われると、子どもの育ちにはどのような影響が生じるのだろうか。
容易に想像できるのは、体の柔軟性、しなやかさ、俊敏性、忍耐力など、筋肉系と神経系、循環器系等の育ちの違いだろう。実際、文科省が行っている小中高校生に対する運動能力テストのデータは1985年ごろをピークに下がってきて、教育関係者を焦らせた。50メーター走などの走力だけでなく、俊敏力、投力等も下がってきて、体格は伸びているのに、運動能力が下がって関係者は驚いたものだ。
図表1は、運動能力テストの中の女子の1000メーター走の結果を昭和45年と平成12年で比較したものだ。
昭和45年は1970年で平成12年は2000年だからちょうど30年の差がある。このグラフは母親と娘の持久走力の比較のようなものだ。ごらんのようにだいたい20秒の差がある。
21世紀に入って文科省は焦って学校に運動指導の強化を要請したが、形式的な一斉指導を導入すると、逆にデータが下がってしまう等がわかり、遊びの中で育った体の力を意識的に取り戻すことには、十分な工夫が必要なことがわかってきている。