ミサイル成功はソ連邦解体の副産物

北朝鮮のウクライナ・コネクションについては、国連安保理北朝鮮制裁委員会の専門家パネル委員を務めた古川勝久氏も、「2012-17年に毎年、のべ100人から500人の北朝鮮人がウクライナに入国し、協力者を獲得していた可能性が高い」と指摘している。(産経新聞、18年2月12日)

北朝鮮はRD250改良型エンジンの設計図を盗んだとの説もあるが、難解なロシア語の設計図を解読し、組み立てるのは至難の業で、古川氏は「製造に携わった技術者の協力が不可欠」としている。

韓国に亡命した北朝鮮の元ミサイル専門家も「われわれはロシアとウクライナの技術者に育てられた」と告白していた。

北朝鮮が昨年9月と今年1月に発射した短距離弾道ミサイルは、低空を不規則軌道で飛行するロシア製短距離ミサイル、イスカンデルMに酷似している。この開発には、ロシア人技術者の関与が噂される。

30年前のソ連邦解体後、北朝鮮工作員がウラル地方などロシアの閉鎖都市に入り、失業した核・ミサイル専門家を一本釣りしたことがあった。

ロシア外務省当局者は筆者に対し、「ソ連解体後、北朝鮮に渡ったロシア人技術者は26人だったことが極秘の調査で分かった」と話していた。北朝鮮の核・ミサイル開発成功は、ソ連邦解体の副産物なのだ。

北朝鮮国旗
写真=iStock.com/Stephen Anthony Rohan
※写真はイメージです

「ロシア軍の武器庫」にも目をつけている

ウクライナと隣接するモルドバ領沿ドニエストル共和国にも、北朝鮮が関心を示している。

モルドバからの独立を目指すドニエストル共和国は、親露派住民の多い帰属未定地域で、ロシア軍の平和維持部隊が駐留。帝政ロシア時代から軍の武器庫で、大量の兵器が野放しになっている。その中には、放射性物質で作る汚い爆弾や劣化ウラン弾も貯蔵されているとの情報もある。

筆者は2005年、ドニエストルを訪れた際、北朝鮮の工作員が定期的に来ていることを知った。この地は通常の旅行者が訪問するような場所ではなく、兵器の買い付け以外考えられない。

旧ソ連で暗躍する北朝鮮工作員の拠点は、ウクライナの裁判資料に明記されたように、ベラルーシにあるといわれる。外交筋によれば、在ベラルーシ北朝鮮貿易代表部は16年、大使館に格上げされ、北朝鮮偵察総局の拠点となっている模様だ。

ベラルーシの北朝鮮偵察総局は、ウクライナの戦況を注視し、新たな兵器の確保や技術者の一本釣りを密かに狙っているかもしれない。

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