企画の一歩目は素人の違和感

ダイバーシティというのは、性別や年齢、人種や国籍、文化や宗教、学歴や職業といった、たくさんの人と人との違いのことで、インクルージョンは、そういったひとりひとりの違いを受け入れて、それぞれの違いを活かしていきましょうという考え方ですよね。絶対にそういう世界になった方がいいに決まっています。誰に聞いても「その通り!」と言うでしょう。

ただ、実現させるのが難しい。どの企業もめちゃくちゃ真剣にこのテーマに取り組んでいるのに、多様な個性を認め合って、活かし合うことは本当に難しく、永遠のテーマと言ってもいいのかもしれません。

でも、今僕の目の前には、めちゃくちゃダイバーシティな集団が、おたがいをリスペクトして、受け入れ合い、それぞれの力を発揮して、勝利という目的に向かってひとつになっている光景がある。

だとしたら、ラガーマンがビジネススクールを開校して、ダイバーシティ&インクルージョンについて語ってくれたら、ビジネスパーソンは目から鱗がぼろぼろしちゃうんじゃないかと思いました。リーチマイケル(当時のラグビー日本代表キャプテン)先生のリーダーシップ論なんて、もう最前列で聞きたすぎるだろ。

そして、さらに飛躍して、ビジネススクールだけじゃなくて、街にあるいろいろな施設(レストランや映画館や美術館など)も全部ラグビーに引っかけたものにして、「ラグビーを通したまちづくり」をやったら、街を作るプロフェッショナル企業の三菱地所らしさもでるぞ……と妄想は膨らんでいくのですが、ここでの大きなポイントは、企画の大切な一歩目が、「素人の違和感」から始まったということです。

大事なテーマもほとんどの人は興味がない

僕は当時、ラグビーにおいて、国の代表になる際、「当該国に3年以上継続して居住していれば代表の資格を得る(※)」というルールがあるなんてことは、もちろん知りませんでした。ラグビーにくわしい人からすればそれは当たり前のことで、だからこそ日本代表に多様な国籍の選手が集まることに対しては、違和感などひとつもないわけです。ただ、ど素人の僕から言わせてもらえば、「そんなルール、ほとんどの人知らんからな!」となります(謎の上から目線)。

僕は、ラグビーに限らずどんなテーマであっても、大半の人は素人なんじゃないかと思っています。同じテーマに四六時中向き合っていたり、熱心な人というのは人口の1%もいればいい方で、残念ながらほとんどの人は、僕やあなたが大事で大事でたまらないと思っているそのテーマ(ラグビー、認知症、がんetc.)に興味がないんです。

だって、もし、みんなが興味を持ってくれているとしたら、僕の作ってきた番組の視聴率はすべて20%超えていたはずですよ(1回もとったことないですよ、20%なんて)。世の中もっとムーブメントだらけになって毎日が大変なお祭り騒ぎでしょうし、社会課題なんて全部解決しちゃって、やっぱりみんなでお祭り騒ぎしていますよ。

でも、そうはならないわけで。それはなぜかというと、繰り返しになりますが、そのテーマに興味のない素人の方が圧倒的なマジョリティだからです。

渋谷のスクランブル交差点
写真=iStock.com/Juergen Sack
※写真はイメージです
※2022年1月1日より、居住年数による代表資格は「36ヵ月間」から「60ヵ月間」へ変更された