ヒット企画は、どのように生まれるのか。認知症の状態にある方がホールスタッフとして接客をする「注文をまちがえる料理店」など数々のヒット企画を生み出した元NHKディレクターの小国士朗さんは「私が制作していた『プロフェッショナル 仕事の流儀』では、40日間の密着取材をしていた。そのとき素人の目線の重要性を知った」という――。

※本稿は、小国士朗『笑える革命』(光文社)の一部を再編集したものです。

カメラ
写真=iStock.com/batuhan toker
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専門性がないことがコンプレックスだった

僕はよく「自分は●●のど素人です」という言い方をします。

●●には、「認知症」や「がん」といった言葉が入ってくるわけですが、謙遜でも何でもなく、とにかくどの分野のことでも本当に、ズブの素人なんですね。自分に何か特筆するような専門性があったらよかったのですが、「何のプロですか?」と聞かれても、答えられるものが何ひとつない。これはNHKで番組を作っていたディレクター時代からずっとそうでした。

小国さんが企画した認知症の状態にある方がホールスタッフとして接客をする「注文をまちがえる料理店」
撮影=森嶋夕貴(D-CORD)
小国さんが企画した認知症の状態にある方がホールスタッフとして接客をする「注文をまちがえる料理店」

周りには、医療や福祉、教育や政治、経済などにめちゃくちゃ精通していたり、動物や自然を撮影するために人生をかけていたり、スポーツや音楽やドラマといったエンターテインメントのことだったら誰にも負けないという誇りを持ったディレクターやプロデューサーがごろごろいました。

でも、僕にはないんです。どれも興味があるといえばあるけど、そのことだけをやり続けたいわけではない。あっちにふらふら、こっちにふらふら。そんな自分の姿勢は無責任なんじゃないだろうか。もっと腰を据えて、徹底的にその問題、その分野に向き合い続けるのが、伝える人間の責務なんじゃないか。僕にも「小国といえば、これ!」と自他ともに認める専門性があったらよかったのに……といろいろ思ったりもして、一言で言うと、「専門性がないこと」は僕のコンプレックスでした。

しかし、です。

この専門性のなさ=素人であることが、企画をする上では意外と武器になるぞということに最近気づいてきたのです。