全国に広がる「共感」が市場を超える

そうした仲間グループが誕生するにあたっては、ネットが活躍する。HPを開いてグループメンバーを募集するのはごく自然の成り行き。さらには、フェイスブックなどのSNSといったメディアも、その場を得て活躍する。今までであれば、それなりの投資が必要な仲間集めのための広報宣伝であるが、今ではネットを通して費用もかからず簡単にできる。

彼女たちは、ビジネスをしようと思ってビジネスを始めるというより、気の合った仲間と一緒に時間を過ごすために、仲間づくりを始める。その仲間の場に、互いに資源を持ち寄ることで、ビジネスが広がる。編み物カフェであれば、糸を紡ぐ人、染める人、編む人が集まる。人が集まれば、そこにお菓子を作る人、おいしい茶葉を作る人も出てくる。

それぞれの人と仕事をうまく編成すれば、それぞれが、事業主でありかつそれぞれの製品の買い手となるという状況が生まれる。いわば、小さいけれども、いくつものビジネスと市場が動き出す。

仲間をつくろうという気持ちは主婦だけでなく、若い学生にもある。私が学長を務める流通科学大学の話で恐縮だが、昨年、東日本大震災被災者支援のために、学生有志による「RYUKA被災地復興サポートチーム」が生まれた。彼らは、一つの活動として、「神戸ともしびプロジェクト」を立ち上げた。

このプロジェクトは、阪神大震災からの復興を果たした新長田・大正筋商店街の方々と学生たちとが、宮城県南三陸町に建設される仮設商店街に街灯を届けようとする試み。学生たちは、学園祭や地域のイベントなどで募金を呼びかけた。

それで製作された12灯の街灯を昨年末、夜行バス等に乗って、南三陸志津川復興名店街(仮設商店街)まで届けた。今年1月に開店を控え急ピッチで建設が進む現地に、商店街の方々や学生たちの思いと祈りのこもった街灯が灯った。贈与した街灯の製作者は神戸のメーカー。太陽光発電、LED照明を使用したランニングコストのかからない“被災地仕様”となっている。

震災復興で苦労した神戸・長田の商店街と、これから復興を図る南三陸町の商店街をつないだのが学生たち。彼らは、神戸・長田でFM局を開設した経験を被災地でも生かそうと、南三陸町でFM局開設に協力したことがある。その縁が、このプロジェクトにつながった。