地方の高校生の一番の就職先は、大工場や大型店、そして公務員。しかし、有力大手メーカーや小売業者は、国内拠点は閉鎖して海外移転を図る。公務員も狭き門。就職の機会が消えてしまった高校生たちはとりあえず大学や専門学校に進学する。しかし、その大学は先に見た通りの状況。
働き手がいなくなる。そうなると、市場は狭隘化する。市場が狭隘化すれば、有力企業は国外市場へと資源を一層シフトさせる。それに対して、国は、需要拡大を狙って所得税/消費税の減税を図り、自ら雇用増を図るべく公務員増員を考えるべきときだが、動きはそれとは真逆に進む。今のところ、日本市場も若者の未来も好転する気配はなさそうだ。
わが国の経済状況は暗いが、世相は、それには負けず、意外に明るい。自分たちの生きる道は自分たちで見つけるとばかり、草の根のようにビジネス創造の種が生まれている。ビジネスの創造というと、新技術をつい思い浮かべてしまうが、今ではそれ以上に貴重なのが「人と人とのつながり」という資源。
たとえば、ミシンカフェ。カフェや手芸屋さんの一角に、何台かのミシンが並ぶ。利用料金は1時間500円くらい。型紙づくりなどのアドバイスがつくと800円。そこにやってくる主婦は、自分で子供の服を縫い、あるいは作り直しをする。ミシンがけは、自宅で一人でできる仕事だが、カフェに集まってみんなといろいろ話をしながらできるのが楽しいという(Sankei Biz 2011.10.17)。
同じように、編み物カフェやワークショップも生まれている。ひとり静かに編み棒を動かす手芸を、カフェやワークショップで会話を楽しみながらやるというスタイルだ(「東京ニットカフェ案内」)。手芸も、仲間と一緒になってやることで、また違った楽しみが生まれる。