数字がないから「不満」が生まれる
逆に、数字ではなく「曖昧な概念」で評価をすると、不公平が生まれます。なぜなら、気に入っている部下に甘い評価を下せてしまうからです。
すると、次のような不満が出てきます。
「私の給料、どうやったら上がるんでしょうか。こんなに頑張っているのに」
「なぜ、あの人のほうが能力が低いのに、給料が高いんですか?」
「この積極性の評価点、どうしてDなんですか。Aのつもりなんですけど」
「私だけ未達成なのに、みんなと同じ給料でいいんでしょうか……」
これは、経営者やマネジャーの方々に来る質問の一例です。みなさんも、感じたことがあったり、同僚から言われたりしたことがあるのではないでしょうか。
これらの問題は、すべて「数値化」で解決することができます。
部下の立場では、上司が評価せざるを得ない結果を出すことが最優先事項です。「あんな上司に評価されても仕方ない」と思うのではなく、結果を出すことが何より見返すチャンスになると思って、感情を横に置いてみてください。
ちなみに、識学を導入した会社では、数値化による評価制度を会社全体で徹底してもらうようにしています。
「導入されていない会社だったらどうすればいいのか?」と思うかもしれません。世の中の多くの会社では、曖昧な評価基準で感覚的に上司が評価を決めているからです。
その場合は、まずは上司に対して、お互いの認識のズレがないように、「どの数字を達成すれば、自分の評価につながるのですか?」と伝えてみましょう。あなた個人は、正しく数値化で物事を考える姿勢を貫いてほしいと思います。
日頃から「数字のある会話」をしているだろうか
ここまで、評価に対するネガティブなイメージを取り除く話をしてきました。
どちらかといえば、「受け身」に感じたかもしれませんが、次は「主体的」な話です。
ここまでの話を受け入れたプレーヤーは、自分の目標達成のために動くようになります。つまり、心を鬼にするようになる。
すると、ある1つの共通点が現れます。
それは、「会話の中に数字が出てくる」のです。
逆に、会話に数字がない人というのは、どういう人でしょうか。
「これを売りたいんです!」「このビジネスはうまくいきます!」
こういった話し方をする人がいます。情熱で押し切るようなタイプです。
新入社員や20代の頃であれば、この言い方でも通用したかもしれません。
こういう若者を過剰に評価してしまう経営者や社長がいることも事実ですからね。
しかし、現実はそれだけではダメです。情熱で押し切る方法しか知らない人も、どこかでその壁にぶつかります。30代や40代で、こういう情熱的な言い方しかできない人は、社会人としてかなり厳しい状態になっていきます。
年次を経るにつれて、数字の根拠を出し、論点を整理して話すようにしないと伝わらない場面が増えていくはずです。
「この商品は1000万円の売上が見込めます。その理由には3つあって……」
「このシステムを社内に導入したら、毎月200万円のコストが削減できます。それだけで5人分の給料が捻出できます……」
このように、誰かに伝える段階では、数値化させることが有効です。
感情にうったえかける表現は、最後の味付けのようなものです。
腐った肉にどんなにスパイスを振りかけても、腐っている肉は腐っています。
もちろん、人間ですから数字だけで動かない面もあるでしょう。そこで最後に熱を伝える……、というのが正しい順番です。あくまで数字が先です。
よく、社長が験担ぎをしたり、神社にお参りをしたりします。
それは、「やるべきことはすべてやった」「数字的な検証はすべて考えに考え抜いた」というように、他にやるべきことを終えてから儀式的に行なうから意味があるのです。
これも、順番が逆にならないことが大事です。