なぜ他人の接種にまで干渉するのか
新型コロナウイルスワクチンの接種率は約80%に達し、いまやサードショットの接種が粛々と進められている。しかしそんな21世紀の今でも、ジェンナーが種痘を考案した18世紀後半同様にワクチンを恐れる人はあとを絶たない。
2022年3月15日、ノーマスクで反ワクチンを訴える陰謀論団体が新型コロナウイルスワクチンの接種会場となった東京ドームに押しかけ、開場を2時間近く遅らせた騒動があった。騒動の模様はテレビ朝日などの記事でも報じられた。
ワクチンの効果をいくら説明しても聞く耳を持たないばかりか、他の人々への接種をも威圧的に妨害するというのは、多くの人にとって理解しがたい行動だろう。いったいどんな人々が、どんな理由で反ワクチンの立場を取るようになり、なぜ他人の接種にまで干渉するのだろうか。
筆者がこれまでに経験した反ワクチン派への取材では、注射で体内に異物を入れることに、経口薬よりも一層強い抵抗感を抱いているケースが多かった。また、いくらやさしく説明されても、(ワクチンに限らず)科学的な話題を理解できない人が多い。「専門家の説明はわからないことが多くて頭に入らない。聞きたくなかった」といった言葉を、反ワクチン集団の内情を教えてくれた人々はよく口にしていた。
日本人の3分の1以上は科学的な話が苦手
そもそも、科学的な話に苦手意識を持つ人が人口に占める割合は決して少なくない。内閣府の「科学技術と社会に関する世論調査」(平成16年2月調査)によれば、「科学技術に関する知識はわかりやすく説明されれば大抵の人は理解できる」という問いに対し、「あまりそう思わない」と答えた人は19.3%、「そう思わない」と答えた人は16.0%を占めた。
「機会があれば、科学者や技術者の話を聞いてみたいと思うか」という問いへの回答では、「あまり聞いてみたいとは思わない」が22.8%、「聞いてみたいとは思わない」が24.4%だった。つまり、日本人の実に3分の1以上は「科学的な話は理解しにくい」と考えており、半数近くは「科学者や技術者の話はできれば聞きたくない」と思っているわけだ。