値段は下げず、売り方を変えることで、「どこにでもある商品」の価値を知らしめ、成功したケースもある。小阪氏の著書でも紹介されている、森永乳業「黄金比率プリン」の販売個数を飛躍的に伸ばした地方の食品スーパーの取り組みだ。
それまでも月に20個ほど「黄金比率プリン」を売っていたその店は、食べたお客さんの「美味しい」という声をチラシに入れ、入り口には「あのプリンあります」と書いたPOPを掲示し、レジにも「あのプリンお見逃しなく!」と掲げるといった取り組みを重ねて、月間1000個の売り上げを達成。別の食品店が、このやり方を参考にしてみたところ、やはり月に10個の売り上げを400個に伸ばすことに成功したという。
「この2店に限れば大ヒットですよ。もっとも、メーカーが2009年12月に規格変更し、『黄金比率プリン』は『黄金比率プリン焼仕立て』になってしまった。そうなると、現場はモチベーションが下がりますよね。消費者は飽きっぽいからとメーカーはすぐに新製品を出しますが、その前にやれることはたくさんあったはずです」(小阪氏)
価格を下げる下げない、規格変更の是非に悩む前に、値ごろ感があるのか、客に価値を正しく伝えているか、売り方に工夫の余地はないのかを検証する必要がありそうだ。
さらに、ルディー氏は売り手側の自己分析の必要性を説く。
「変わったのは自分たちじゃないのか、不景気の影響を受けているのはこちら側じゃないのかと問うたほうがいい。自分の心理はマーケティングに出てきます。消費者は飽きっぽいと売り手はよく言いますが、実は売り手側が飽きていることが多いし、弱気になって高いと売れないだろうと思いこんでいるケースはよくある。問題は消費者側だけにあるのではありません」
※すべて雑誌掲載当時