日本人は世界一の心配性だ。広告代理店大手J・ウォルター・トンプソンの2009年春~秋の調べによれば、将来に不安を抱く日本人の割合は調査対象国10カ国中でもっとも高く約90%。「不安の強さ」も先進国では一番高い水準だった。

高まる不安感は、顧客心理としてまず押さえておくべきキーワードだ。

ルディー和子●早稲田大学商学学術院客員教授。上智大学国際部大学院経営経済修士課程修了。エスティ・ローダー社マーケティングマネジャーなどを経て現職。著書に『売り方は類人猿が知っている』などがある。

不安を感じるメカニズムをマーケッターのルディー和子氏はこう分析する。

「不況であっても何か行動を起こせるのであれば人間はそう不安を感じないもの。ただ、現在の日本は政治も年金も医療も不確実性が高くて先が見えませんよね。予測ができないと行動を起こせない。だから不安を感じてしまうんです」

だが、この不安感ゆえにモノが売れない、消費者は買い控えしていると考えるのは早計だ。例えば、ネット通販市場は二桁成長を続けている。

「ネット通販の人気が高いのは、自宅でできる便利なショッピングだから。自分が一番安心を感じられる家(巣)で買い物ができるからです。

不安な社会が続くときに馴染みのある定番商品が売れるのも安心感が得られるため。これまで長く使ってきた商品であれば、『損はしないだろう』と思える。不安材料が少ないんですよ」
(ルディー氏)